この展示は、「寄せ集めのグループ(a pick-up group)」によってつくられた。もともとは、よく知らなかった間柄の人間の集まりだ。けれども僕は、自分の作品の展示だけを終えて「ハイ、サヨナラ」という風な、ありがちなルーチンワークにしたくなかった。だから負担を覚悟のうえで、若きアーティストたちに幾度にもわたって集まってもらい、互いの言葉を重ねた。
展示タイトルは、長い話し合いの末、「 □ と □」に決まった。
穴埋め問題のようにも見えるし、読み方もすぐにはわからない。だから、このタイトルを見たときに出る咄嗟の反応は、「は?」「なにこれ?」「意味不明!」というものかもしれない。実は、このタイトルを決めた僕らにも、明快な答えがあるわけではない。僕ら自身もわからないことを象徴するように、このタイトルを決定した。これは、いったい、なんなのだろうか?
未曾有の人災を経験し、長期的な「危機」に瀕していることが自覚された社会では、確固たる答えを専門家を含めた誰もが知り得ないということが、以前にも増してあきらかになってゆく。そこでは、自分の応えを、自分の言葉と感性でつくりだすことが求められる。そのなかにあって、アートは、同時代にどのように触れるのであろうか。
表現の世界はこれまで、ある種の「過剰さ(excessiveness)」によって彩られてきたように思う。不快さや揺さぶりをかける力、破壊力などが、執拗に求められ、勇ましく称賛された。だがまたそれは、繰り返されるうちに、そうした「過剰さ」さえもがひとつの陳腐さに行きつくという、むなしい宿命をはらんでいたように思う。いま、そのような時代の末期において、ここに集まる作家たちがなにを想うのか。そして彼/彼女らの表現は、なにを伝えてくれるのか。
今回の展示はまた、本年度をもって募集を停止することの決まった造形表現学部造形学科の卒業生たちによる展示でもある。働きながら、子育てをしながら通う「学生」の多かったこの夜間部の廃止の決定が、ひとつの時代の終わりに直面した際の人間の判断を象徴しているように、僕には思える。中村寛(文化人類学者・人間学工房の呼びかけ人、多摩美術大学准教授)
【出展作家】
・石原七生 Nanami ISHIHARA
・相良裕介 Yusuke SAGARA
・白井晴幸 Haruyuki SHIRAI
・砂川啓介 Keisuke SUNAKAWA
・堀越達人 tatsuhito Horikoshi
・M&W from Miles Waters (紫安圭太、渡邊聡志によるアートユニット)
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