加藤はこれまで、店舗や灯台、自分や友人たちが住んでいた空間を木造で再現し、その構造物をさまざまな人々と引っぱり起こす「引き興し」と名称づけたプロジェクトを多数行ってきました。「引き興し」プロジェクトは構造物をゆっくりと引き上げるため、多くの人の力を必要とします。日常生活では出会うことのなかった人と人は構造物を媒介に集合し、動かなかった構造物が動く瞬間を共にします。その共有の時間を「引き興し」や「展覧会」で提示することで、観客をつぎつぎと参加者へ変換させることが加藤の作品のテーマになっています。
本展では、2012年の暮れから数ヶ月間にわたってアメリカ中のさまざまな都市(ハリケーン「カトリーナ」で被害を受けたニューオリンズや経済破綻したデトロイトなど)を訪れ制作した写真作品と、今夏ノースダコタ州のネイティブアメリカン保留地で行ったプロジェクトを発表します。
加藤は昨年末のアメリカ滞在時に、自由と資本主義によって構築されたアメリカのグローバリズムがさまざまなローカリズムを飲み込んでいくさまを目の当たりにしました。そして、これまで行ってきた「引き興し」プロジェクトを"Pull and Raise Project"としてアメリカで行うことを決意し、今年はじめに訪れた場所のひとつであるノースダコタ州のネイティブアメリカン保留地へ再び赴きました。彼らが利用する移動用住居のひとつである「ティピ」と19世紀後半から20世紀にかけて、ネイティブアメリカンに対する同化教育政策として存在していた「ボーディングスクール」を現地の人々と作り、それを引き興すまでをひとつのドキュメントとして発表します。
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