小林孝亘の約3年振りの新作展「夢みる2秒前」を開催いたします。
今回の個展では、1枚の絵から物語性が読み取れる要素の強いものと、従来のように光を取り込んで普遍的なものを表現しようとした作品とを組み合わせた構成で、朝日が柔らかく射し込む森を描いた500号(197 x 333 cm)の大作をはじめとした油彩5点とドローイング約10点の最新作を発表します。
小林はこれまで、意識的に物語性を排除し、描く対象がなるべく普遍的なイメージに近づくことを心がけて作品を制作してき ましたが、2011年頃から身の回りで続けざまに起こった初めて経験する出来事によって、浮き足立つような感覚が付き纏うよ うになり、ふと「物語」という言葉が浮かんできた、と言います。物語といっても断片的なもので、起承転結があるわけではなく、 たとえば今回の新作で鳥に連れられていく人を描いたものがありますが、それは小林の中に生まれたイメージをほとんどそのまま描いたものです。つまり、これまでの作品に比べると普遍化を試みていない作品ということになりますが、小林の中で、たとえそれを描くことにより作品の解釈が限定的になってしまうとしても、それは描かずにはいられないもの、受け入れるべきものだと思うようになったのです。
上記の"浮き足立つような感覚"について小林は、「歩いているのに歩いていないような感覚、何かを見ているのに何を見ているのかわからないような感覚、夢の中にいるような感覚」と語っていますが、今展の「夢みる2秒前」というタイトルは、小林が実際に寝るとき、眠りに入る一歩手前のある一瞬に、覚醒しているのに現実ではない風景が見えてきて、その覚めているのか眠っているのか定かでない状態が、物語という言葉が浮かんできたときの感覚に似ていると思ったということからきています。
新たな境地を見せる小林孝亘の新作展に、どうぞご期待ください。
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