平川恒太(1987年、埼玉県生まれ)は、東京藝術大学大学院を修了(2013)、ゴールデンコンペティション2012にてグランプリのゴールデン賞(2012)、損保ジャパン美術展 FACE2013にて審査員特別賞(2013)、アートアワードトーキョー丸の内2013にて三菱地所賞(2013)を受賞するなど、注目の若手アーティストです。
平川は、これまでにも原爆の図 丸木美術館(埼玉)でのインスタレーションや、日蓮宗大本山清澄寺・釈迦寺(千葉)での企画「アートが山をのぼること」を開催するなど、歴史との関わりや社会の成り立ちに主題を求め取り組んできました。
2009年、平川は研究旅行先の広島で「Trinitite」(トリニタイト)と名付けられた人工鉱物に出会います。トリニタイトは、人類最初の核実験であるトリニティ実験(1945年、アメリカ)の際に、砂漠の砂が高温にさらされ一度溶けて生成された人工鉱物の名前であり、現在では核実験によって生成される同種の鉱物に対しても使われています。
その鉱物の美しさに秘められた死の歴史に、日本の戦後美術史が重なったことが、作品シリーズ「Trinitite」の制作に繋がったと平川は話しています。
本展では、日本軍が戦時中制作した戦争記録画(永久貸与)を黒一色で描いたシリーズ「Trinitite」の新作を中心に発表。メディアや歴史を通した戦争しか知らない若い世代として、戦争記録画という戦時中の画家の仕事を通し、画家の身体性で戦争や美術史を捉えようとしています。
広島、長崎、お盆の先祖供養など、生と死の歴史が時間を超える日本特有の月である8月に、戦後日本社会が抱えて来た多くの問題に向き合うべく往時に思いを馳せることは、同時に現代や未来を考える事に繋がってゆくことでしょう。
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