ハイナー・ビンディングは1958年ドイツ、トゥットリンゲン生まれ。1980年から1985年までカールスルーエ造形美術大学で学び、ペール・キルケビーに師事、現在ケルンを拠点に活動しています。
ビンディングの絵画は一見すると、職人的な熟練、工芸的な緻密さ・精巧な仕上げとは対極にあります。キャンバスやパネルには荒々しい筆致や指の跡が残され、しばしば木切れや着古したシャツの布地が、無造作に打ち付けられたり、貼付けられていたりします。
近作では鮮やかな明るい色彩も使われていますが、基本的には灰色や暗緑色、褐色、えんじ色など渋い色彩が好んでもちいられ、作品は再塗装された古い家具のように、ずっと以前からそこにあって時間を経ているような印象を見るものに与えます。
彼の仕事は、あらゆる試みが尽くされてしまった絵画の歴史を踏まえ、現代における絵画とは何であるか、を問うことです。歪んだ木枠を使ったり、故意に木枠を露出させたり、キャンバスの裏側から描いたり、拾得した板を支持体に用いたり、既成のプリント地や時には自分が着古したシャツを支持体として使ったりしていますが、それは絵画のフォーマット自体を検証するためです。
また、彼はあえて、特定のスタイルを自分のスタイルとして固定することを避けて制作しています。印象派の系譜にある作品、抽象表現主義的な作品、ミニマリズムの作品、といったように様々なスタイルの作品を描きます。それら豊かで複雑、そして親密な絵画の総体がビンディングの仕事です。
今回の展示は、ハイナー・ビンディングの日本における初個展です。
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