西森の言う「肯定」とは、単にYESということだけでなく、「こうしなければ」「こうあるべき」という常識に沿って感覚が微調整される以前の、くだけて言えば「子どものような」感覚に率直に従う、というようなニュアンスを含みます。「漠たる世界」とは何であるのか、たとえこの先も西森が解釈し得なかったとしても、それが西森自身を制作へと突き動かす動機であり続ける以上、描きたいという衝動に素直に従うことこそが、西森が今取り得る最善の方法に違いないのです。その覚悟を「肯定」と呼ぶのです。
自分に表現できる「天国」のぎりぎりが意識と無意識を隔てている鏡が壊れる瞬間の、まだこちら側に立ってはいるけれどあちらが見えるかもしれない、という光景です。一種のチラリズム。それが自分なりの「天国」の描き方で、可能な限りリアルなファンタジーです。(西森瑛一)
今回の「天国について」では、「天国」という象徴的な存在を「漠たる世界」のメタファーとしています。ギリギリまで研ぎすました感覚で、僅か一瞬だけ垣間見えるような世界。西森が追い続けているものはそのような瀬戸際にあるのです。天国そのものを見る事は出来ないけれど、美しい景色に出会えば、あぁ天国のようだ、と感じる事ができるように、描きたいと感じるその美しい情景を率直に描き続けることが、「天国」に最も肉薄する手段であるのです。
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