梅津庸一は1982年山形県生まれ、東京造形大学絵画科卒業後、第9回岡本太郎記念現代芸術大賞展(2006年)で準大賞を受賞したのち、「絵画説明会」(2011年、スプラウト・キュレーション)、「であ、しゅとぅるむ」(2013年、名古屋市民ギャラリー矢田)をはじめ実験的な展覧会にも参加、現在精力的に活動を続けている作家です。
坂本夏子は1983年熊本県生まれ、2012年に愛知県立芸術大学大学院美術研究科博士後期課程を修了。第1回絹谷幸二賞奨励賞(2009年)、VOCA2010奨励賞(2010年)を受賞し、「絵画の庭―ゼロ年代日本の地平から」(2010年、国立国際美術館)に参加するなど、その活躍が期待される作家です。
本展は単なる二人展とは異なり、梅津と坂本がともにひとつの作品に取り組むかたちで制作された油彩とドローイングを展示いたします。いくつもの習作を連歌のように繰り返すなかで、ドローイングはあらゆる情報を帯び肉付けされ、タブローへと姿を変えてゆきます。ここでの制作は、構築的であり即興的、計画的であり恣意的でもある、常に表裏一体の状況を往来し、ひとつの表現として集成されています。
同時にそれぞれ個人として制作・発表する二者による対等な恊働は成立し得るかを体現する、その背景にはかつての工房という存在を連想させ、ひいては絵画はどこからうまれるのかという問いをも引き起こします。近代以降の絵画の歴史において認められた"個"、そこに強くこだわるあり方に疑問を投げかけ、そこから導き出される複雑化した回答を眼前に立ち上げることで、私たちをただ"鑑賞者"という立場に甘んじさせることなく思索を誘います。
梅津庸一と坂本夏子、二つの"個"の融合が純粋に展開されていくのではなく、新たな人格の生成ともいうべき化学変化をもたらし、現代の絵画に対する問題提起を行った展覧会に是非ご期待ください。
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