日本、中国、パキスタンという三つのアジアの国から、渡邊陽平 、杭春暉、エジャズ・サイードの三名のアーティストの作品を展示致します。彼らはいずれも人物をモチーフとした絵画を制作している作家で、杭春暉とエジャズ・サイードは、日本で初めての展覧会となります。
渡邊陽平は1976年長野県生まれ。2002年に富山大学大学院教育学研究科を修了後、国内外で作品を発表しています。東京画廊+BTAPでは2007年に個展『瞬きを紡ぐ』を開催し、2009年には『VOCA展2009』(上野の森美術館)の出品作家に選ばれました。渡邊はアクリル絵具、油彩、色鉛筆など、近現代の素材を幾重にも重ねて描きます。描かれた風景と人物は、渡邊の世界観、人間観の反映であり、変容する現代人の影を映し出しています。
杭春暉(Hang Chun Hui)は1976年中国安徽生まれ。2005年に中国中央美術学院視覚伝達専攻修士課程を修了、2011年に中国芸術研究院現代水墨人物絵画専攻博士号を取得し、現在は中国北京理工大学芸術学院で教鞭を執っています。杭春暉は複雑な空間を現出させることを目的とし、それに相応しい線を画面に描くことを重視します。精巧且つ緻密に描く中国の伝統的技法を受け継ぎながら、そこに独自の認識と感覚を加えています。寂寥灰色の画面には、工業時代の憂鬱と現代的思考の深さが表現されています。
エジャズ・サイード(Ejaz Saeed)は1987年ラホール生まれ。2011年にラホールの国立美術学院を卒業したばかりのアーティストです。在学中は細密画を専攻し、ムガール・ミニアチュールの技術を継承しながら作品を制作しています。ワスリ紙やグワッシュなど伝統的な素材を用いて描かれるのは、過去の英雄や聖者ではない、現代の一般的な人物です。しかし円形の支持体はこれらの人物の光背に見立てられ、彼らに一種の聖性を与えるかのようです。
三名のアーティストは異なる文化的伝統を受け継ぎ、それを昇華させて独自の人物画を作り出しています。そこには、現代アジアという共通の世界に生きる私たちの意識が、多面的に映しだされています。
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