私の制作方法は、主に様々な人間が交差する都市空間の中で、その場所が持つ歴史の痕跡や記憶の断片を拾いあつめ、実際には目にすることができないそれらを 可視化させるための行為や仕掛けを展開することです。
例えば、過去の仕事では壁や路上の穴や亀裂に身体的な介入をすることで、これらの穴や亀裂が垣間見せ る悲しみや喜びの記憶を、また新たな時間と場所へと繋げることを試みました。これらの歪な形をした痕跡は、私に多くのことを想像させるのです。
目に見える 物質としての痕跡は、過去にここで何かが起きたことを物語ります。たとえいつかその痕跡が消えてなくなったとしても、記憶は人の中に 残り続けるものなのだろうと思います。
私は作品を通して、その記憶とその先に繋がる想像の世界を、異なる場所と歴史を生きる人々の頭の中に浮かび上がらせ ることをしたいのです。
林加奈子
〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14-2F 3331 Arts Chiyoda 205