極並の作品はこの数年、目をみはる変化を遂げています。
数年前までは人物や背景は単純化され、輪郭は黒く縁取られ、色面が均一に塗られるという、非常にグラフィカルな印象でした。しかしこの2、3年で、描かれる人物の背景に室内の家具が現れ、海や山といった自然の風景が描かれ、平面画面の中に奥行き、物語性が感じられるようになりました。
そして、今回の作品では、「より絵画としての表現を追求したかった」と本人が言うように、印象派を彷彿させるような表現による新たな絵画が生み出されています。
木漏れ日の森林、岩肌に佇む女性...背景に描かれる風景は以前に増して、微妙な色調と光を捉え、何層ものフィルターを重ねるように描かれ、線と色面で描かれる人物との対比が一層人物の存在感を強めると同時に、不思議な空気感が漂う世界が広がっています。
顔の見えない人物は自分にとって、よりバーチャルな存在になりつつあると言います。背景に関しては、いわゆるペインタリーな表現を意識していると言うが、アクリル絵具で描くことにより、絵具そのものへの抵抗感を減らし、よりフラットな印象を求めていると言います。
油絵具のようなキャンバスへの絵具の盛上りも少なく、層を重ねてもアクリル絵具がキャンバスの裏へ入り込んでいく感覚であり、改めて平面としての空間性を意識させられていると言います。画面の中で繰り広げられる、この人物と背景のアンバランスさが、極並の新たな創造行為と言えるでしょう。
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