ローリー・シモンズは、人間の代わりである腹話術人形やおもちゃ、人形、雑誌の切り抜きなどをその他の小道具と共に登場させる写真や映像作品で知られています。
本展では、新作の写真シリーズ『LOVE DOLLS』14点と、映像作品『Geisha Song』を展示いたします。
2009年、小山登美夫ギャラリーでの初個展の際来日したシモンズは、秋葉原の書店で女子高生の制服を着たラブドールの小さなポスターを見つけました。
シモンズは、「日本への旅の前に、私の作品を変え、前に進ませてくれるような何かを見つけられるような予感が強くしていました」(Laurie Simmons, The Love Doll, p.10)と後に語っています。彼女はさっそくこの高性能にカスタマイズされた、等身大の日本のラブドールを2体購入することになりました。
もとはセックス・パートナーの代理品として作られた人形は、薄いスリップを身にまとっただけの姿でクレートの中に入れられ、シモンズのニューヨークのスタジオに届きました。付属品の箱には、婚約指輪と女性器が添えられていました。
シモンズは、この人間サイズの「女の子」との写真的な関係を記録し始めます。
結果として生まれた写真では、まるで生きているかのようなラテックスの人形が進行中の「アクション」シリーズを演じる様子が表現され、作品は作家とこの進化する人形との関係性を追い、クロノロジカルなタイトルがつけられています。
シモンズは人形のために洋服を選び、ジュエリーや小道具を用意し、リビング、台所、バスルーム、あるいはプールの中や庭など、様々な場所で様々なポ―ズのポートレートを撮影しました。
彼女は人形たちを刻一刻と移ろう太陽の光、変わる季節の中で、フィルムに記録しています。
映像作品「GEISHA SONG」では、日本の伝統的な芸者に仕立てられたラブドールが、ゆっくりと動くカメラワークと、細部まで行き届いたクローズアップで映し出され、マレーネ・ディートリッヒの"Falling in Love Again"の英語の歌詞を日本語のアクセントで歌う、軽快な歌声が流れます。
『GEISHA SONG』: http://www.youtube.com/watch?v=RilTKShzT1E
本シリーズは写真集『THE LOVE DOLL』として刊行され、作品はニューヨーク、ロンドン、パリ、アスペン(コロラド州)、スウェーデンのヨーテボリで発表されています。
2011年ニューヨークのSalon 94で行われた個展の展評でジェフリー・カストナーは、人形の大きさという物質的な問題にとどまらない彼女の作品の変化について、
「シモンズは明らかに感情的な度合いを強め、彼女自身も彼女のプロジェクトもより豊かに、心理学の領域に終始しない広がりを見せている。これまでのより物質的で心理学的な、いわば毒を抜かれた演出ではしばしば失われていた"アニメーション"的な要素をも、巧みに使いこなしている」と評しています(Jeffrey Kastner, ARTFORUM, May 2011)。
同シリーズは、森美術館で開催される10周年記念展『LOVE展:アートにみる愛のかたちーシャガールから草間彌生、初音ミクまで』(2013年4月26日〜9月1日)へも出品されます。いよいよ日本で初公開となる待望の新シリーズを、是非ご高覧ください。
» 作家プロフィール
ローリー・シモンズは、1949年米国ニューヨーク州ロングアイランド生まれ。1971年、タイラー・スクール・オブ・アート(フィラデルフィア)芸術課程修了。現在ニューヨーク在住。作品はメトロポリタン美術館、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館、グッゲンハイム美術館、ロサンゼルス現代美術館、フィラデルフィア美術館、ウォーカー・アート・センターを始めとするアメリカの名だたる美術館にコレクションされているほか、アムステルダム市立近代美術館、イスラエル美術館、日本でも国立国際美術館、原美術館、金沢21世紀美術館で所蔵されています。近年では2012年、スウェーデンのヨーテボリ美術館にて、ラブドールシリーズを含めたこれまでの代表作の個展が開催されされたほか、今年のベニス・ビエンナーレでは、アラン・マッカラムとの共作による『ACTUAL PHOTOS』シリーズ(1985年制作)を出品予定です。コムデギャルソンやシャネルほか、ファッションブランドとの コラボレーションプロジェクトも多く手がけています。
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