本展は森美術館開館 10 周年を記念して開催される「LOVE」展に呼応するかたちで開催される企画展です。
SAC のグランドオープンから5周年を記念し、現代美術から古美術にわたる多種多様な分野を扱う各フロアが、本展キュレーターを務める杉本博司の出した「お題」に答えるかたちで企画展示致します。
問答の先に立ち現れる数々の作品は、絡み合うエロスとタナトスを魅せるにとどまらず、愛と死について、この永遠なる難題を皆様にも投げかけます。
純愛小説の古典的名作「愛と死を見つめて」は昭和 38 年に発表され、翌 39 年には吉永小百合、浜田光男主演で映画化されて日本全国を涙に濡らしました。
愛を語る時、それはいつもエロスと共にあり、死と隣り合わせにありました。
愛と死を見つめること、それは刹那と永遠を見つめることでもあります。本展は愛と死を見つめる作家たちを厳選して皆様にお届けいたします。
なお、本展は純情表現のみに偏らず、同等の重さで劣情表現にも意を払っています。
人の心はそのはざまに生きるものだからです。
窮霊汰 杉本博司
水中をゆっくりと漂う女性の姿を、微妙に濁らせた水とそれを湛えた水槽をスクリーンとして映し出されるインスタレーション、高嶺格による「水位と体内音」。
重力から解放され、滑らかな水と一体となったような裸体の浮遊感と、水を使った2.5D立体画像とも言うべき奇妙な物質感が、独特の陶酔をもたらします。
また、時折人体の一部だと分かる程度に抽象化された光は美しく原始的で、私たちがかつて母親の胎内にいた時の記憶を呼び覚ますようでもあります。
加茂昂の複数枚のキャンバスによる巨大なペインティング「絶望と希望のあいだに道をさだめて僕は歩く」には、現実とは美しくも死と隣り合わせであるということが示唆されています。
それらの作品と同時に童謡「ふるさと」と日々消費される「コンビニで売られているエロ本」を合わせた、少々アイロニカルで開放的な杉本博司の小品もお目見えします。
自らを育んだ故郷・根源を思えばこそ、生と性の向こうにある死を見つめることができるのだと考えます。
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