流はこれまで「他人への興味」をテーマに、実生活の中ですれ違った現代人の姿を、独特な色彩と線を用い、まるで風景に溶け込むような抽象的な作品を発表し高い評価を得てきました。昨年からは東北に通う中で目にした、日本の自然に意識を傾けた作品を描き、「人から風景」へとテーマを展開させています。展覧会のタイトル「可視線」とは、3.11以降、私たちに美しさだけでなく畏怖や不安を感じさせることになった儚い自然の風景の中に、流の目が捉えた色や線のことを指しています。
流は、色彩の鮮やかな濃淡や線の表情、また絵具のもつ光沢や質感を用いて主題を表現します。塗り重ねられた絵具はそれでもなお透明感をもって優雅に流れ、滴り、緊張感と暖かさを交差させながらキャンバス上に壮麗なイメージを作り出します。こうして築き上げられた画面は、矩形の枠を越える広がりと奥行きを持ちながら私たちの感覚を震撼させ、想像力を促します。
本展では130号の作品「可視性」を中心に、その他10点ほどのペインティングをインスタレーション形式で展示いたします。昨年以降ワークショップ等で被災地の支援に尽力しながら、自分は「ただ描き続けるしかない」と語る作家の渾身の最新作に是非ご期待ください。本展は現在のロケーションで開催される最後を飾る展覧会として開催いたします。
昨年以降、東北に足を運び続ける中(*)で、なによりも私の目を捉えて離さなかったのは、その自然の美しさだった。
どこまでも強く美しい風景。
だが、その自然の意味するものはある時を境に変わってしまった。
常につきまとう、目に見えない不安。
これまで絶えなく人間への興味を描いてきた私が、目の前にひろがる景色の息づきをなぞり始めた。
自然に生する線を描き始めた。
目に見える線も、見えていない線も。
私はひたすらに見つめ続け、描くしかないのである。
私はひたすらに対峙し、描くしかないのである。
〒112-0014 東京都文京区関口1-30-9
TEL:03-5272-2476