井上光太郎は1982 年島根県生まれ、2005 年大阪芸術大学付属大阪美術専門学校研究科絵画専攻卒業、2003 年以降大阪を中心に発表を続け、2010 年からは生活の場と発表の場を東京に移し、活動の幅を広げているところです。
井上作品に描かれるモチーフは家と樹木と人物にほぼ限定され、やや暗めの色使いとうねるような筆使い、のっぺらぼうの顔を持った人物はどこか不穏な気配が漂います。今回の個展タイトル「暗沌光幽」は井上の造語のようですが、その絵の雰囲気を如実に表し、混沌とした暗闇の中でほのかな光を見るようです。
夢はいつも「受動的に出会わされ」ながらどこかで現実とつながり、景色や人物は光を当てられたように浮かび上がり、その情景を「絵画という手法で表している」と語られています。そこには語るべきものも、感情さえも見いだせないと言いつつ、しかし家から漏れる光はぬくもりを感じさせ、また人物の顔はいつものっぺりして不気味でありながら、どことなく身近な存在感を持っていて、敵対する存在ではない親しさを感じさせます。
こうした表現は厳しく不安な外的状況の中で、受動的でありながら希望を孕んだ光を見ているような気がしてならず、「光幽」という言葉の拠り所もそこにあるように思えます。
今展では油彩9 〜10 点、ドローイング数点の展示を予定しています。
アーティストコメント
私にとって" 夢" とは不自由な、そして理解し難く、
次の瞬間何が起こってもおかしくないような恐ろしい世界である。
現実には、それを想起させる場面や光景に瞬間的に出会すことがある。
まるで暗闇の中でパッとスポットライトが照らされるように。
それらの場面や光景は何も語らないし、感情さえも見出せない。
ただ私自身が受動的に出会されるのである。
私はそれらを絵画という手法で表している。
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