Bambinart Galleryでは、"AUTUMN LEAVES FIELDS"と題しまして、Edgar Honetschlager、Gabriele Sturm、Martin Walde、三田村光土里の4名のアーティストのドローイングによるグループショウを開催いたします。
19世紀末、ホワイトキューブのエキシビションスペースとしては初となるウィーン分離派館 セセッション がグスタフ・クリムト、コロマン・モーザー、ヨーゼフ・ホフマン、ヨゼフ・マリア・オルブリッヒらによって設立されました。これらの芸術家による世紀末ウィーンは先進的で自由なだけでなく、既存の体制を超え、様々な文化や思想における芸術研究に、今日に至るまで影響を与えてきました。
2012年は、その絵画やドローイングに日本の美意識から強く影響を受けたグスタフ・クリムトの生誕150年を迎えました。クリムトとウィーンの現代美術は、異なる思考、国籍、言語、批評、政治、歴史、社会、環境問題が混合した様相を見せる都市文化の芸術的遺産を受け継いでいます。ドローイングおよび芸術に様々な概念を反映させ展開しているウィーンの芸術家の視点からは、衰えること無く、ますます輝きを増す美への追求にむけられた繊細なアプローチがうかがえます。ウィーンの芸術の美しく表現力豊かなスタイルは、コンセプチャルなアプローチを背景に保ちながらもそれだけにとどまらず、軽やかでユーモアに富んでいます。
2006年の秋、セセッション美術館で個展を開催し好評を博した三田村光土里は、ウィーンを拠点に国際的に活躍するオーストリアのアーティストたち、エドガー・ホーネットシュレッガー、マルティン・ヴァルデ、ガブリエル・ストームらと交友関係が生まれました。本展では、モダニズムの巨匠たちとそのドローイングへの情熱に敬意をこめて、ウィーンを縁につながった4名のアーティストによるドローイングを発表いたします。
Edgar Honetschlager
エドガー・ホーネットシュレッガー(1963年オーストリア生まれ。ウィーン在住)は、1982年 から1988年まで経済と美術史をオーストリアとサンフランシスコの美術大学で学びました。これまで人生の半分をアメリカ、日本、イタリア、ブラジルで過ごしています。
ホーネットシュレッガーの作品は、個人主義と文化的差異への賞賛、すべての『モノ』が生命とその多様性の美しさに対する脅威を投げかけるという分析に基づいています。直線的歴史観は、西洋の一点透視法の発明やそれどころか西洋の愛の概念と同じくらい間違っている。彼はその考えを、ドローイング、ペインティング、映像、ならびにパフォーマンスや、インスタレーション、写真など様々な手段で表現しています。
社会問題にスポットをあてながらも、彼のドローイングはシンプルで親しみ易く、子供のような無邪気さがあります。
1994年、白石コンテンポラリーと共同で佐賀町エキジビットスペースに置いてアートプロジェクトSCHUHWERKを開催。インスタレーションの一部は現在もヨコハマのROI1で観ることができます。
1997年 ドクメンタ X, カッセル、ドイツ
2005年、愛知万博においてパフォーマンスプロジェクトを開催。www.chickenssuit.com
2008年写真集 TOKYO PLAIN
日本を舞台にした長編映画も多数撮影し、ベルリン映画祭でプレミア上映された『MILK』ほか、2011年に制作された『AUN』は、現在も世界各国のフィルムフェスティバル、展覧会場や映画館で上映されています。
2012年には、3.11の日本の震災後、地震、原発事故、放射能汚染問題に強い危機感を持ち、『Sound Of Silence』という、一般参加型の映像プロジェクトを立ち上げ活動を続けています。www.honetschlaeger.com
Martin Walde
マルティン・ヴァルデ(1957年オーストリアのチロル地方インスブルック生まれ)は、ウィーン芸術大学アカデミーで学びました。1991年にオットー・マウアー賞、2012年にはウィーン芸術賞を受賞。
ヴァルデの作品は、いわゆる「トランスメディア」と評されるように、異なるメディアに取り組んでいます。ヴァルデは鑑賞者を直接的にドラマチックなインスタレーションに参加させ、その行為をプロジェクトにしています。彼は感覚器官と認識との新しい関係を創りだしています。展示空間の中で作品は固定されずに突如として自由に動いたり多機能をもたせることで、それらの本来の解釈から自由になるよう展開されています。1980年代後半から、彼は新しいバイオテクノロジーの素材と、現在ではあたりまえの表現手段となっている観客参加型を追求することで、彫刻の概念を広げることに取り組んできました。これらの方法により、ヴァルデは展示を単純なプレゼンテーションから、ばらばらな興味を持った鑑賞者を結びつける公開スタジオのような開発プラットフォームへと変換しています。
ヴァルデはドローイングをメディアの間に現れる「現象」と説明しています。そして異なる現実(記録される「現実」)とストーリーボードである「非現実」が容易に入れ替わることができるのです。
ヴェネツィア・ビエンナーレ・アペルト'86(1986)
ベルギーのゲントで複数の個人宅を展覧会場にした伝説の展覧会「シャンブル・ダミ」(1986)
イスタンブール・ビエンナーレ(1989)
ウイーン・ゼセッション個展(1996)
ドクメンタX カッセル、ドイツ(1997)
モントリオール・ビエンナーレ(1998)
東京オペラシティ、オープニング展覧会「感覚の解放」(1999)
府中市美術館 公開制作展 (2001)
ZKM 近代美術館 カールスーエ、ドイツ(2009)
Museum MARTa Herford, ドイツ(2010)
モスクワ現代アート・ビエンナーレ(2011)他
マルティン・ヴァルデ 「Pipa」 2002
yellow and white Ink on archival print 28.3×21.0cm
Gabriele Sturm
ガブリエル・ストーム(1968年オーストリア東チロル地方、リエンツ生まれ)は、大学で心理学を学び、心理士として様々な現場で働いたのち、1995年から2002年までウィーン芸術大学でMarkus PrachenskyとHeimo Zobernigに師事しアートを学びました。心理士として、様々な社会的問題を抱える一般の人々に関わったことは、彼女の制作スタイルにも表れています。
ガブリエル・ストームは日常生活の個人的な出来事に観点を置いています。その日常の観点は、身近なものとそうでないもの、近くと遠く、ミクロとマクロ、昔と今の間に広がる差異に向けられています。彼女は手にした情報を構築するためにマップを描きます。そしてリサーチの重要なイメージと出来事に関連するマップを組み合わせます。その「リサーチ」をインスタレーション、コラージュ、ドローイング、写真、絵画、映像などとともに重要なコミュニケーションツールとして展示スペースの中に展開しています。
マックス・エルンストの制作方法にみられるように、木版画や古いイラストレーションといった反近代の図形言語を使用しながら、ストームは歴史的なテーマを引用し、シンプルでさりげないコラージュのテクニックで、それらを彼女自身の現在の体験と組み合わせています。その表現は、明るく繊細でありながら政治や歴史への視線も兼ね備えています。
今回の展示では、彼女が2009年から取り組んできたプロジェクト、『Paradise Bird』のドローイングを紹介します。ドイツ、ブレーメンの美術館でたまたま目にした極楽鳥の剥製をヒントに、羽根の装飾がもたらされた「羽根の旅」をトレースするため、パプア・ニューギニアへ旅して制作したシリーズです。彼女はそのドローイングを、デ・コラージュ/デ・イラストレーションと呼んでいます。
"Weatherstation 2009" ZKM Media ?Lounge カールスーエ、ドイツ(2010)
"bolt holes of paradise" Galerie 5020 ザルツブルク、オーストリア(2010)
"UN/FAIR TRADE" Neue Galerie Graz ? steirischer Herbst グラーツ、オーストリア (2007)
"art ? archives" パリ+ナント、フランス (2002)
"Block"Apex Art in New York, ニューヨーク(2000)
ガブリエル・ストーム 「paradiese bird」 2010
DeCollage and Drawing 52.0×31.0cm
三田村光土里(1964年愛知県生まれ、東京在住)は、1993年よりアーティスト活動を始め、これまで世界各地でインスタレーションを中心とした発表を重ねてきました。2005年、文化庁海外派遣芸術家としてヘルシンキに1年間滞在。2006年には、日本人としては荒木経惟以来となるゼセッション美術館での個展を開催したほか、東京都写真美術館、モスクワ現代美術館、ザルツブルグ近代美術館など国内外で開催された多数のグループショウに参加、様々な素材を用いた空間作品を発表しています。近年は、ライフワークとして滞在型アートプロジェクト「Art&Breakfast」を世界各地で開催、2011年にはモナッシュ大学美術館/メルボルン、2012年にはProject space Uqbar/ベルリンで発表しています。
三田村の作品は、「人が足を踏み入れられる三次元のドラマ」。インスタレーション作品には、日常の記憶と記録のドラマをテーマに、写真や映像、家具や小物が物語の挿絵のように配置されており、三田村自身の個人的な記憶や追憶が繊細に張り巡らされています。それらは私小説を読むように鑑賞者の記憶に呼応します。その行間に漂う気配は、気を抜けば指の間からこぼれおちる砂のように、はかない「時」を創り出しています。
三田村光土里 「parking」 2012
water ink pen on paper and tracing paper 21.0×29.7cm
〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14
アーツ千代田3331(旧練成中学校)地階B107
TEL:03-6240-1973