一本の軌跡を引く単色の線のはずなのに、刺繍糸は時に色とりどりの束をまとって微妙な彩りをなし、固まって面を作っては拡散し、また時に渦を巻くようにくねって、複雑な世界を映し出します。刺繍絵画には古い歴史がありますが、新しいアブストラクトな手法のひとつとして刺繍糸を使い続けているのが、佐藤文香氏です。
麻のキャンバスに油絵具などで彩色し、刺繍を組み合わせて絵を作り上げる彼女。糸で縫うだけではなく、糸を貼付したり、ラメやビーズ、スパンコール素材も柔軟に融合させ用いることで、本来混ざり合わないはずのものを合わせる時の摩擦や軋轢のボーダー上に、幻想的かつオブセッショナルな美を生成。半立体で描画される木々や植物、星や生物などのモチーフには、見ている者の揺らめく連想力を優しく慰撫するようなオーラがあります。インテリアとしても美しいその作品の数々は近年、各地の企画展などで注目を集めるようになりました。
本展は、彼女にとって東京での初めての個展です。タイトルのpurpure(パーピュア)とは、紫色(purple)の古英語。紫色は「波長の短い青と、波長の長い赤を混ぜた中間色であり、青空と夕日の境界の色」で、自身の制作にとって重要な意味を持つもの、と彼女は言います。過去5年のアーカイブからのベストチョイスを展示するにあたり、この色の本質をキーワードにしました。名古屋での個展などで発表してきた大小のキャンバス作品、約30点を展示・販売する他、立体作品や雑貨類なども合わせて販売いたします。
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