1950 年代後半から今日にいたるまで、写真の第一線を走りつづける篠山紀信(1940-)。時代を見越し、時代に先駆けるその活動はつねに話題をさらい、また賛否両論を巻き起こしてきました。芸術か否かという問題の上に、写真はある ─ 。そう断言する篠山は、写真の本領は様々なメディアを通して広く社会に浸透し、時空や虚実をも越えて人々に力強く働きかけることにあるとの洞察のもと、テーマ、ジャンルを問わず夥しい数の作品を発信してきました。
本展は、いままで美術館での回顧的な展覧会を拒みつづけてきた篠山が満を持して世に問う、国内美術館初の大規模な個展です。「写真力」とは何か?篠山は「写真の力が漲みなぎった写真」であり、撮られた者も、撮った者も、それを見る人々も、唖然とするような「尊い写真」だと言います。篠山の主戦場である有名人のポートレートを中心に、50 年間にわたり撮影されてきた写真の中からとびきり「写真力」のある作品約120 点を選び、巨大な展示空間にあわせダイナミックに引き伸ばして、新たなストーリーのもと紹介します。篠山自身が「写真の神様が舞い降りてくれた」と認める決定的なイメージが、半世紀におよぶ時を越えて一堂に会する今回の展示は、篠山にとって美術館というメディアを舞台にした新たな挑戦です。それはまた、われわれが生きてきた時代や社会を強く喚起するとともに、写真というメディアに内在する強力なエネルギーを体感できる場となるでしょう。
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