» 作品紹介
岩城芳子は1999年から、ひとや動物をモチーフにした陶芸作品を、展示空間全体にインスタレーションする方法で発表してきました。
多摩美術大学の油絵学科に在学していた学生時代、自然の豊かな大学周辺を散歩していて、偶然土の中から見つけた粘土で、《草むらのうんこ》という作品を作りました。赤ん坊の体調がうんちでわかるように、粘土は地球のうんちのようだと感じて、このタイトルをつけたと岩城は話します。大学を卒業して美術教員として働いていた壟話学校では、粘土を触っているうちに子供たちの顔が"お風呂あがり"のように活き活きとしていく姿が印象的だったといい、岩城は土の魅力に惹きつけられるようにして、陶芸の世界に足を踏み入れました。
岩城は多治見の研究所で正統な陶芸の技術を習得し、その技術は彼女に、より自由に土を扱うことを許してくれました。1999年の初個展では、「Little red riding hood」という展覧会名で『赤ずきんちゃん』をテーマに、あどけない表情の赤ずきんちゃんや、笑顔のおばあさんなど、100点を超える陶人形をインスタレーションする展示を行いました。陶人形を天井から吊るしたり、工場跡に残っていたおちょこに絵付けを施したものや、ドローイング作品を織り交ぜるなど、彼女は以降、陶芸という手法にとらわれることなく、制作と発表活動を行ってきました。たくさんの小ぶりな陶人形をインスタレーションしながら、彼女の中に浮かんだものがたりを現実に映すようにつくられていく展示空間は、わたしたちをどこか夢心地にさせてくれます。
» 展覧会について
本展覧会「Just Another Diamond Day」は、岩城芳子にとって小山登美夫ギャラリーでは初となる個展です。
陶芸を学んだ多治見から宮城へ2007年に転居した岩城は、制作環境の変化から、野焼きという岩城にとってあたらしい技法を模索しはじめました。唐三彩の女人像のようなふっくらとした表情が印象的な出展作は、ブロンズにも似た光沢をもっていますが、これは釉薬ではなく、半乾きの状態の粘土の表面を磨き上げ、じっくりと蒸しながら焼くことで得られるものです。
岩城はこれまで旧姓の平田よしこの名前で制作活動をしてきました。母になり、宮城での質実剛健な暮らしの延長で制作される彼女の作品は、愛らしいだけでなく、それまでにない力強さを備えるようになりました。みなさまこの機会にぜひご高覧ください。
〒135-0024 東京都江東区清澄1-3-2-6F・7F
TEL: 03-3642-4090