秋場康平は、1982年東京生まれ。2009年芸術大学油絵科を卒業。ペインティングとドローイングを中心に制作を続けている若手アーティストです。秋場の作品は、自らの内面を激しく告白したドローイング、ペインティングによって特徴付けられます。紙が擦れるまで激しく加圧した不安定な線で描かれた自画像のシリーズは、己の存在意義を問い続けるアーティストの孤独な内面戦いを垣間みるようで、私たち観るものの心を揺さぶります。様々なマチエールを駆使しながら絵の具を激しくキャンバスに打ち付けたようなペインティングは、まさしく「制作している最中は頭が真っ白になって何も考える事ができない」と語るアーティストの生身の生産物と言えるでしょう。
佃弘樹は、これまで平面構成的な抽象表現で風景画や建築を描いてきました。どこか未来的な雰囲気を持ちつつも、私たちの生きている現在の文明社会を鋭く反映している佃の絵は、ソリッドに描かれるイメージとは裏腹に、黒色のインクと鉛筆、木炭など、使われている素材はごくシンプルです。シンボリックなイメージの持つ記号性を曖昧にする佃の独特の構成は、 近付いたときに見えるインクのにじみや筆跡と全体を見た時に感じる静謐さのギャップにも表れています。佃はこれまでドイツやオランダで個展をするなど、主にヨーロッパで評価されてきました。
ブルックリン在住の女性アーティスト、ジュリア・チャンは、様々な素材を用いて彫刻やインスタレーションを制作します。例えば、溶け出したリングポップ(指輪に飴がついたおもちゃ)でシンプルな言葉を綴った作品、陶器で作られた鎖、ガラス陶器製のリンゴなど、素材とのギャップを象徴的に表す作品を多く発表しています。また、「FOREVER YOURS」「ALL MY LOVE」などといった単純で強いメッセージ性を持つ言葉を非常に細かい字で繰り返し書き出したドローイングは、高い集中力と忍耐力を求められる制作過程とは裏腹に実に率直に私たちの心をとらえます。そうした作品をチャンが制作する理由は、手作業によってつくられる事の不完全さを浮き彫りにし、素材の持つ強さや儚さ、痛みと喜び、恐れと勇気などの二面性を追求しているからです。2011年のModern Painters紙で、「100人の注目すべきアーティスト」に選ばれ、ニューヨークのHalf GalleryやパリのColetteでの個展を開催するなど、今後の活躍が期待される注目の若手アーティストです。
ヨハネス・ヴァイスは、1979年ドイツに生まれ、現在もベルリンで活動している若手彫刻家です。ヴァイスの彫刻は家具や日用品など私達の周りにあるものを型取りし、それらを単純に繰り返したり、解体したり、あるいは変換させることで新たな造形を創り上げます。また、色彩のギャップを効果的に用いる事によって、私たちの慣習的な想像力を乗り超えようとしています。例えば、特定の物が本来必ず持っていると予想される色彩を大胆に変えた時に、私たちはその機能(味や匂いも)までもが引き剥がされたと感じてしまいます。ヴァイスはこうした試みを繰り返しながら、身体的、近く的体験の新たなモデルを作り出そうとしているのです。ヴァイスはベルリン美術大学にてトニー・クラッグに師事し、ヨーロッパを中心に様々な展覧会に参加していますが、日本での展覧会は今回が初となります。
本展は、この他にスイス人アーティスト、クラウス・シェッケンバッハによる新作の木彫を加えた5人の若手アーティストによるグループ展となります。
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイビスビルB1F
電話:03-3400-0075