ある哲学者は「美は仮象のうちにその生命をもつものだ」と言った。「美」を追求しているかどうかは甚だ怪しいが、私は「かたち」にかなり弱い。マネキン人形、石像、ポスター・看板などなど、いわゆる偽物(形どる物)の類である。
それらは人の眼に触れることを目的に作られる。見られることこそ存在の意味とも言える。「なんか気になる」と度々眼をやる私はまんまと引っかかっているわけだ。それでも罠にかかった本人としては、そこに人の思惑以上のものがある気がして性懲りも無く撮り続ける。
なぞられた「かたち」が、実体を超える力をもつこともある。
その力は日常のあらゆる物に身を隠し、道行く私たちに絶え間ない視線を投げかけているにちがいない。
2012年 夏
須田(すだ) 一(いっ)政(せい)
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