児玉香織の作品は、そのタイトルにあるようにすべて方眼紙にペンで描かれた線で描かれている。 色もなく、筆跡の表情さえない。
あるのは壁面を覆う、無数の「料理線画」。
2009年の「メークリヒカイト」で、強烈なデビューを果 たし、その後、ARTHK10で発表された、ハンヌ・ダルボーフェンを思わせる揃いの額装による64点組の中国料理のシリーズは連日注目を集め、遂には高橋コレクションに収められた。
料理の本から模写され、特製の方眼紙に下描きも、そして迷いもなく淡々と描かれる線は、CGと見紛う精度を持つ。
そこにはモチーフの持つ華やかさと言ったものは廃され、正確に写しとりたいという、児玉 の強烈な欲望だけが鮮明に表れている様に見える。
余りに冷静な欲望の反映は、独特の不安定な構図とあいまって、見飽きる事がない。
その細部の絡まりを追いかけるのはボッシュやブリューゲルの不思議な怪物達を探しまわる感覚にも似ている。
無数のB5サイズから大画面 への変化(しかし解像度は何ら変わらないのだ!)は、より絵画としての確立を目論むように見える。 単純な欲望の反映は、今や明確に作品としての強度を獲得したといえるだろう。
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