1983年生まれの小泉悟は2009年に沖縄県立大学大学院の彫刻専修を修了し、樟を素材に動物の表皮の内に存在する人物像を制作し続けています。2010年にShowcaseで初個展「Relation」で野生的本能を失いつつある現代人の少し不安気に見える表情を、動物と人間の顔を重ね合わせた頭像で表現しました。 同シリーズの作品は、多数のアメリカやアジアのアートフェアで発表され注目を集めています。今展は半身像の新しいシリーズの作品を加えて、約7点の新作木彫刻を発表いたします。
『至る場所でうつろう影がこちらを見つめる。
文明が発達し、生活が変化するにつれ動物的な身体感覚や自然の一部であるという感覚は徐々
に薄れていく。それに呼応、反比例するように増える「自然の一部として存在したい」という
思い。奥底からこみあげる不安。潜在的に持つ土への帰属意思は急速に膨らんで行き、
その意識は本能を潜める動物にうつろう影となって写り込み私に姿を見せる。
そしてその影と私、潜在意識と顕在意識は親子のように影響し合う。』
一見、着ぐるみの可愛い人物像のような作品を通して、小泉は野生を表現します。自然と共に生きてきた人間が高度に文明化する事で失う野生は、生命の根源であり、生きる事そのものと言えます。しかし生きる手段の一つとして追求された文明化や進歩は、生きる事の喜びを失わせる対極ともいえます。
小泉は意識の上で求める方向と潜在的に望む方向の狭間で彷徨う現代の人間像を、はかなくも美しい未成熟な人物の姿で表現します。作品からは単なる愛らしさを超えた力強いリアリティーが感じられ、人間という生き物について今一度考えさせられます。小泉悟の「Opposite」をどうぞご期待下さい。
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