» 作品紹介
イ・ヨンビンはパネルにマウントした紙に水彩と墨で、緻密で、それでいて透明感のあるイメージを描きます。作品を構成するこれらの素材は全て韓国の伝統的なものを使っています。
2002年より制作している風呂をモチーフにしたシリーズでは、公衆浴場を俯瞰した構図に、タイルの一枚一枚までが繊細なラインで描き込まれ、人物たちも配置されています。裸で身体を洗っているその人物たちは大きな浴場の中で小さく、社会的な定義や役割から離れた素の、平等な存在として描かれています。それは作家が自身に正直に、そして内面をみつめながら作品を制作していることを語っており、同時に鑑賞者にも同様の感覚と視点をもたらします。彼女が経験し、観察し、考えていること。それがまるで浴場のタイルの細かな線の一本一本に織り込まれたような、ある種の告白のような感覚を与えます。2011年に韓国のHakgojae Galleryで開催の個展で展示した158点のドローイングでも裸の人物を描き、その時々のありのままの感情を伝えています。
イ・ヨンビンはまた、「陰」という概念を作品のなかで取り扱っています。「冬を超えてこそ夏が来る。死があるからこそ生が可能になる」というような、ネガティブな要素のなかに希望や美しさをみる思想。その重要性を彼女は枯れた花などのモチーフによって伝えています。彼女の作品のもつはかなさや孤独感もまた、強さとしっかりと結びついているのです。
» 展覧会について
本展は上述の公衆浴場のシリーズの新作ペインティング4点と、ドローイング数点を展示いたします。
» 作家プロフィール
イ・ヨンビン(Lee Youngbin)は1980年、ソウル生まれ。2004年にSungshin Women's Universityを卒業、2009年に同大学の大学院でM.F.A.を取得。現在もソウルを拠点に制作しています。
ソウルのHakgojae Galleryなどで個展を開催。主なグループ展に「Portfolio 2005」(ソウル市立美術館、2005年)、「Why don't we take a short rest?」(釜山市立美術館、2006年)、「Into Drawing」(SOMA Drawing Center、ソウル、2007年)があります。また、東京国立近代美術館、京都国立近代美術館で開催された「現代美術への視点 エモーショナル・ドローイング」の韓国での巡回展「Emotional Drawing」(ソウルオリンピック美術館、2009年)にも参加しました(韓国のみで展示)。今回は国内初の個展となります。
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