» 作品紹介
ジョン・プラプチャックはコラージュの施されたドローイング、ペインティングやミクスドメディアの彫刻などで、半分人間、半分動物のような不思議な生き物と彼らが生きる風景を描きます。廃棄された素材や布きれ、紙、糊から樹脂など、様々な素材によって生み出されるこの生き物は、ユーモラスでどこか憎めない可愛らしさを感じさせながらも、今にも崩れてしまいそうな打ち捨てられたものの悲哀を帯びてもいます。一見は子供のようなイメージでも、そこに漂う深いメランコリーは大人の世界のものです。プラプチャックはその卓越したコラージュの技術によって、人間の状況、またそれにおける関係性を題材とした舞台を描きます。その背景には暴力、戦争、不平等、孤独などへの洞察があり、それを反映するように、作品には攻撃的でありながら傷つきやすく、クールでシニカルでありながらも純粋という側面があります。
「I will think deep through this trouble(このやっかいな問題を通して深く考えるよ)」、や「at least I thought I would be holding you while the world collapsed / only your world is collapsing dear come in(世界が壊れていく間、せめて君を抱きしめたかったんだ/壊れているのはあなたの世界だけよ)」。象徴的であって、ほかでもない真実であり、また時には親愛の表現でもある、画面に書かれるこれらのキャラクターの嘆きや会話、そして作品のタイトルは、プラプチャックの作品に重要な役割をもっています。一見気まぐれに、即興的につくられる作品にも思えますが、イメージとテキストの絶妙のバランスを得るのは難しいといいます。ナラティブを使った具象表現の可能性を追究しつづけるプラプチャックの作品は、詩的で美しくもあり、また時には胸を刺すような強い力で迫ります。
» 展覧会について
プラプチャックは近年、これまで使ったことがなかった新しい素材を取り入れて作品を制作しています。本展ではアルミ、また便座やゴミ箱を使用したそれらの彫刻作品に加え、ドローイング作品を展示いたします。プラプチャックはこれらの多くは喪失感や挫折感を取り扱っているといいますが、また一方で展覧会タイトルは「for all the love in the world(世界の全ての愛のために)」としています。
» 作家プロフィール
ジョナサン・プラプチャックは1972年、カナダのウィニペグ生まれ。1997年にカナダのマニトバ大学を卒業、2001年にカリフォルニア大学で修士課程を修了。現在はロサンゼルスを拠点に制作しています。
主な美術館での個展にクリーブランド現代美術館(2006年、アメリカ)、ヒューストン大学美術館Blaffer Gallery(2009-10、アメリカ)、Ausstellungshalle zeitgenössische Kunst Munster(2009、ミュンスター、ドイツ)、モントリオール現代美術館(2010)があるほか、ロサンゼルス、ニューヨーク、ロンドン、パリ、デュッセルドルフなど各地で数多くの個展を開催しています。主なグループ展に"USA Today: New American Art from the Saatchi Gallery" (ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドンなどを巡回、2006-08)などがあります。作品はロサンゼルス現代美術館、ニューヨーク近代美術館、ホイットニー美術館などにパブリックコレクションとして収蔵されています。小山登美夫ギャラリーでは2003年、2006年以来3度目の個展です。
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