1985年、神奈川県に生まれた菊浦は、2005年に東京藝術大学へ入学、2010年に北京の中央美術学院に留学し、本年3月、東京藝術大学大学院(坂口寛敏研究室)を修了しました。在学中に参加したグループショウ、プロジェクトでは、絵画のほか立体、インスタレーションを発表し、作品のエッセンスを提示しています。本展では新作ペインティングを含む作品を発表。本展が初個展となります。
菊浦は主に風景を描いていますが、その地理的位置や歴史的背景は意味を成さず捨象され、感情ではなく感覚的に自身の記憶に留まったイメージ、あるいはいくつかの風景が混ざり合ったイメージを描いています。
しかしイメージそのものにも意味はなく、それらは「記憶の曖昧さ」をおもしろがる行為であったり、「感覚」や「衝動の正体」を探るための方法であったりします。いくつかのふと気になった場所や形に、共通点がなくても「気になる感」が同じであったりするとき、「自身がそう感じる源流はどこにあるのか」「他者は同じように感じるのか」という2つの興味が生まれ、また同時に「なぜ他者との感覚の差異は発生するのか」という疑問が生じます。菊浦にとって、それらは解決すべき問題というより、好奇心の対象として捉えられ、絵画制作というアプローチで探っています。
「すべてが断片」そう考える菊浦にとって、イメージはその断片の存在する前の時間とこれからの時間の通過点です。一つ一つのイメージが目的ではなく、時間が行き来して、通り過ぎる風景の一瞬一瞬が記憶の中で重なり合ったり離れて行ったりする、その狭間をイメージとして描いています。
菊浦自身が経験した日常や旅先ですれ違った風景が作り出したイメージは、特定の場所ではない架空の風景のイメージとなり、例えばそのイメージが鑑賞者の記憶と重なったとき、作者と鑑賞者は同じ感覚を共有できるのかもしれません。
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