生涯をかけて心眼を冷徹に磨き、常に新しい事に挑んだ写真家・横須賀功光。奔放なイメージを宇宙の如く膨張させて表した作品群はたとえ時代が変わっても凛然とあり続け、本来写真が持つ普遍的な魅力をたたえて静かに存在しています。今からちょうど40年前制作された作品『壁』、89年作品『光銀事件』、そして94年作品『光学異性体』のソラリゼーション作品の中から特に人体をテーマに制作された作品にスポットを当て、いまでこそ写真が芸術として認識されるようになるずっと以前に、高い次元で写真の可能性を追求し続けた横須賀功光の世界をご案内致します。
横須賀功光 Noriaki Yokosuka (1937 - 2003)
1937年横浜生まれ、日大芸術学部写真科卒。学生時代に資生堂の仕事を手掛けて頭角を現し、卒業後はフリーとなって活躍する。資生堂のポスターは次々と反響を呼んで瞬く間に広告写真の金字塔となり、その後も飛ぶ鳥を落とす勢いでファッションフォト、シリアスフォトを先駆した。「俺がはじめて嫉妬した写真家だった」と当時電通にいた荒木経惟が言うように誰も真似ができない写真を撮る早熟の天才だったのである。70年後半以降の山口小夜子と山海塾のコラボ作品、また三宅一生のブランドイメージに携わった作品群、そしてドイツ、イタリアン、フレンチヴォーグの最初の日本人カメラマンとして、活躍の場を世界に拡げてゆく。華々しい広告の世界で名声を上げ羨望されたのは、その質の高い作品を追い続ける横須賀の写真に対する執念に他ならない。そして、そうした作品を発表する背景には、横須賀のプライベートワークに残された作品が饒舌に語りかけてくるのである。ここにご紹介する作品は、広告写真の世界とは一線を画した写真家・横須賀功光が生涯をかけて心眼を冷徹に磨き、常に新しい事に挑んだ写真芸術の軌跡である。
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