室井は1975 年生まれ。高校卒業後社会人として就職した後、改めて美術への思いを抱き2003 年東京造形大学に入学、2009 年同大学大学院を修了しました。学部在学中の05 年には群馬青年ビエンナーレで奨励賞を受賞し、06 年VOCA 展に入選、先頃の第31 回損保ジャパン美術財団選抜奨励展では若い抽象作家の旗手として評価を受け、奨励賞を受賞しました。
初期作品には影響を受けたテリー・ウインタースやゲルハルト・リヒターの表現様式を意識させる作品もみられましたが、近年重層的で強靭な背景に、具象とも抽象ともつかない独自の表現様式を開花させ、今の日本を覆う具象絵画の状況とは一線を画した作品を追求しながら、困難な世界への挑戦を果敢に続けています。
かつて、作品は「私の中に残る視覚や聴覚、嗅覚を含むもので、私の体を通した記憶にまつわるもの」であり、「キャンバスと絵具という物質によって、見る側それぞれの記憶に働きかけ、見るたに、別のものが見いだせるような画面を目指している」と語っていましたが、見るという行為を通して作品とじっくり対峙していただき、それぞれの方が作品から見える物を探り当て、思考を重ねていただけることを願っています。
例えば、光と闇、記憶と忘却、緊張と崩壊、幸福と空虚、生と死、向こう側とこちら側、彼岸・此岸、そういったことの" 狭間" に私は惹かれる。
作品は、画面とコンタクトを取るように流動的に進めてゆく。この手法が気に入っているのは、その" 狭間" を体験出来るからかもしれない。
全ての某かが混在し、矛盾を抱え謎を孕んだものを作りたい。
その形、某かが全て集まり何かしらの形を成すまで終わらない。その" 狭間" に今立っている。
『ドクサ』=『憶見』。思い込みで物事を見ると" 真実" には、辿り着けない。
" 真実" とは何か?それは、何かわからないけれども、思い込みを剥がして見てみると沢山の豊かなものが見えてくるかもしれない。
そして、新たな思い込みで、新しい世界を創造してみても...良いかもしれない。
作品には、創造に繋がる" 形" を漂わせてみました。そこから、新しい物語を作って欲しいと思っています。
2012 年 室井公美子
〒130-0014 東京都墨田区亀沢1-7-15
アクセス:大江戸線両国駅徒歩1分・JR両国駅徒歩5分
TEL:03-3621-6813
http://gallery-momo.com