熊谷直人は芸大に入学して間もなく植物をモチーフとして描き始めました。
そこから発展して今の作風になってきたのが2003年頃の事。
もう10年近く植物を描きながら、要素をそぎ落としたり、加えたり、多様な試みを展開し続けています。
基本的には白を背景に使いながらモチーフとして葉や茎を思わせる形状が画面全体を覆いつくします。
時には霧のような透明感のある白の中に包み込まれるように、時には白の中から浮かび上がる明るい色彩として、植物のモチーフが画面に大きく広がり、様々な白が背景を形成してコントラストを作り出し、それがモチーフにみずみずしい生命感、ときには冷たさを与えているようです。
植物には個々の名前があるはずです。
それぞれを生物学的に分類する為に私たちは葉の形や色を分類し、そこに便宜上の名を与えています。
しかし植物を長らく見てきたはずの熊谷にとって、それぞれの差異は主たる関心の対象となっていないようです。
この作家のこれまでの多くの作品のタイトルが「木」や「森」であることが示すように、むしろ植物が共通して持っている生命力、枝を伸ばし、交差し、関節のように葉のできたところから空間を奪い合うようにして新しい方向へ伸びてゆく集合体としての森。
そこにある個々の違いを越え、私たちに迫り、私たちを取り囲む「植物」がこの作家にとってのモチーフなのでしょう。
熊谷の作品の中でも植物は背景の白とせめぎあい、その背景の空気を吸い、空間を抱え込みながら、不思議と見る側の立つ空間の空気と同化してゆくような印象を与えます。
今回の展覧会では大きな壁面を埋めるほどの大作「三つの森」を中心に、それとは違った趣の色鮮やかな樹木の作品など新作を交えて展示します。
空間をも支配する熊谷の木々を体験していただく展覧会となります。
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