比田井南谷(1912-99年)は今年で生誕百年を迎えます。現代書の祖と称される比田井天来(1872-39年)の二男として生まれた南谷は、父が死去した1939年に書道研究機関「書学院」を継承し、45年から抽象的表現を探求する前衛書を制作し始めます。その後も実験的な姿勢を強めた南谷は、59年に渡米し、多くの現代美術の作家と交流を重ねます。ニューヨーク、サンフランシスコ、ワシントンにおける個展の開催、20校にも上る大学での書道史の講演、芸術家に対する書の指導など、書芸術の海外普及に全力を注ぎました。
東京画廊+BTAPは、東洋の造形表現と現代美術を結ぶ試みとして磨崖碑の拓本や書の展覧会を企画して参りました。その中核として、1987年に『比田井南谷展』、2000年に『一周忌 比田井南谷・回顧展:気体的書道の創造』展をそれぞれ開催し、西洋の造形表現と交差するものとして、比田井の前衛的な書作品を紹介しました。この度、天来書院の比田井和子氏の協力のもと、生誕百年記念の展覧会を開催いたします。
書は表象文字・象形文字に由来している為、その絵画性から筆線や構成の系譜を無視することは出来ません。東京画廊+BTAPは日本の現代美術を扱うギャラリーとして、今にまで脈々と流れるその系譜を辿る機会を設けたいと考えました。
また同展では南谷の夫人である比田井小葩(1914-72年)の書も展示します。小葩は漢字かな交じりの現代詩を素材とし、ことばの韻と音楽性に触発されて、ロマンあふれる豊かな世界を展開しました。文学性を拒絶した南谷の厳しい書線の表現と、文学に触発された小葩の情感豊かな表現とを対比的に眺めることで、現代の書の奥行きと展望を感じ取ることができるでしょう。
また、初日の4月7日(土)15時より、比田井和子氏と美術評論家の田宮文平氏を招いてのトークショーを開催いたします。
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