オリバー・ペインは、イギリスのキングストン大学芸術学部を卒業後、1990年代後半からニック・ラルフとのコラボレーションアーティストとして、スケート、ハードコアミュージック、パンク、グラフィティなどのストリートカルチャーをベースにした映像作品やインスタレーション作品を中心に精力的に創作活動を行ってまいりました。2003年にはヴェネチア・ビエンナーレにおいて金獅子(最優秀)賞(第50回ヴェネチア・ビエンナーレ、若手作家部門)を受賞、2004年チューリッヒ・クンストハーレでの個展、2006年サーペインタインギャラリー(ロンドン)での個展など若手アーティストとしては異例の輝かしいキャリアを誇っています。日本国内でも、2004年に水戸芸術館「孤独な惑星」に出品、2008年のヨコハマトリエンナーレにも出展しています。2009年以降、ペインとラルフはそれぞれソロアーティストとしての活動に移行し、特にペインは日本のサブカルチャーを題材とした作品を制作し続けています。
オリバー・ペインの作品は、私たちが常識だと認識している世界の文脈を、一度はフラットにし、そして大胆に角度を変える事で、私たちに新たなビジョンを提供します。昨年11月に開催されたチューリッヒのプロジェクトスペースStudioloにおける田名網敬一との2人展においてオリバー・ペインが発表したコラージュ作品_古いアートブックに掲載されたギリシャ彫刻を日本のTVゲーム「首領蜂(ドンパチ)」からインピレーションを得た弾幕のステッカーをデザインして貼付けた作品_は、西洋文明が自らのアイデンティティの象徴として捉えるアイコンを、日本のTVゲームに象徴的な暴力性が圧倒的に支配する様相を表しています。それは画一的な芸術の権威が、実は妄信的に作られたものである事を暗示しているとも解釈されます。
本展は、「キャンプ」をテーマにした新作のインスタレーションとなる予定です。私たちは古代から旅路の過程で夜間休息の手段としてキャンプを行ってきました。野獣を遠ざけるために火を焚き、その火で暖を取り、料理をするという行為は、現代においてはレジャーとしても幅広い人々の趣向の対象となっています。ペインが作り出すキャンプは、一言で言うとハードコアキャンプです。人々を寄せ付けないよう無数のトゲを持つ威圧的な黒いテント、遊ぶ事のできないコンクリート製のゲームマシーン、クライミングホールドが付けられたキャンバスなどは、ゲーム脳とも呼べる仮想現実的な思考と私たちの日常との境界を奇妙に映し出します。
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