志水は、音、光、振動といった物理世界を構成する微細な要素(elements)の特性を拡大し、それらが引き起こす物理現象を視覚的に再現するアーティストです。
1994年から2006年まで、サウンドアーティスト角田俊也らとともに、制作のコンセプトを共にする共同体でありCDレーベルでもある「WrK」(ダブリュー・アール・ケー)を結成。当初から一貫して「時間上で展開される現象や出来事という刻一刻と変化する事象と、それに対する私たち自身の態度や認識の変遷」に焦点をあて、コンセプチュアルな作品、パフォーマンスを制作発表してきました。
中でも志水は、物理世界における運動と変化に着眼し、不可視な現象を可視化する試みを行ってきました。
近年では緑色、赤色のレーザー光線を用いた大がかりなインスタレーションを国内外の美術館で制作、またレーザー光線をガラスなどの透明な物質を通過させることで得られるモワレを印画紙にダイレクトに当てた写真作品など、レーザーの特性を拡張させた写真作品を発表しています。
この度の個展では、究極的に平行に直進するように整形されたレーザー光線を、表面が滑らかであるはずのガラス素材を通過・干渉させることで、精密なガラス素材が持つ微細な歪みによって光を拡張させ、壁面に美しいモワレ状の波形を描き出すインスタレーション作品を発表します。
また、ガラス素材を通過したレーザー光線のダイレクトプリント写真作品を展示いたします。概念としてのみ存在する「直線」への思考、固体としてのガラス素材の極微化によって生じる、原子・電子などのイメージなど、エネルギーの収縮と拡散をモデル化したインスタレーション作品は、観る者に科学と美、倫理についての思考をうながすことでしょう。
本展は、当ギャラリーにおけるゲストキュレーターシリーズの第一回目であり、志水にとって、国内では、約5年ぶりの個展となります。
また、展覧会初日には、志水児王のパフォーマンスがございます。
志水児王 SHIMIZU Jio
1966年、東京生まれ、東京藝術大学美術研究科大学院修了、現在は埼玉県を拠点に活動する。
1994年、角田俊也らとWrK結成。
2008年に文化庁在外研修員としてコペンハーゲンに移住。
その後2010年末まで同地を拠点に活動。
主な展覧会に、「六本木クロッシング」森美術館(東京 2004)、「釜山ビエンナーレ2008」釜山市立美術館(釜山 2008)、 「日本のサウンドアート」ロスキル現代美術館(コペンハーゲン、2011)他。
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