» 作品紹介
インカ・エッセンハイは、写真やコンピュータを使用したアートが台頭した90年代初頭から一貫してペインティングを制作し続け、具象絵画の再活性化を率いたニューヨークをベースに制作する重要なペインターの一人です。90年代半ば、エナメルを使用したフラットな画面にポップ・カルチャーを思わせるモチーフで注目を集めました。その後2001年に油彩に変更。より3次元的な画面、深くてユニークなスペースを表現するようになります。
エッセンハイのペインティングは、ドラマティックに身体が変形し抽象化された人物や、神秘的な風景などを主に描きます。独特のアウトラインによって画面は動きにあふれ、そこでは悲喜劇両方の要素をもつ様々な出来事が起こり、生成し、変容しつづけているような感覚があります。トルネードのように巻き上がるシーツをまとい、ベッドから飛び跳ねる人物を描いた"Sudden Arrival of Morning"(2001)など、そのダイナミズムは鑑賞者を力強く引き込みます。
彼女の作品の題材は主に、人間、そして欧米を中心とする現代社会です。暴力、不条理、不安、粗野。それと同時に存在するオプティミズム、優美、希望、コミカルさ。9.11の後、"Arrows of Fear"(2002)などの恐怖などを扱う作品や黙示録的な作品を制作しました。また近年では、自然界に宿る女神という神秘的なモチーフを描いた"Green Goddess"(2009)などの作品があります。エッセンハイのペンイティングには、醜くて美しい世界、洗練と純真さ、そして彼女の人間や社会をみる冷静な目と懐疑とともに、ユートピックな夢や信念の力強さが同居しています。
» 展覧会について
「The Natural and the Man Made」(自然と人工)と題された本展では、豊穣な自然界から人工的な世界までを描いた5点のペインティングを展示します。「Late August」は、秋の訪れとともに全てが枯れ始める直前の、樹々の最も瑞々しい姿を描いています。「Frond Painting」は自然に大事に守り育てられる人間を、「The Woodsman」は、土地の所有を主張して木を切り開発を始める人間と、大地に押し込められる木の精を描きます。また一方で、切株しか残っていないのに木にとどまり続ける精の化身(アバター)が「Stubborn Tree Spirit」です。そして精霊の世界が人工の世界にとけ込んでいる「Manhattan」。加えて同様のテーマによるモノタイプの作品も展示いたします。
» 作家プロフィール
インカ・エッセンハイは1969年、アメリカ、ペンシルヴァニア生まれ。1993年にNYのSchool of Visual ArtsでMFAを取得。現在もニューヨークを拠点に制作しています。
主な個展をDA2 Domus Artium 2002 (サラマンカ、スペイン、2005)、マイアミ現代美術館 (フロリダ、2003)の他、オルブライト・ノックス・アート・ギャラリー(バッファロー、ニューヨーク)、ヴィクトリア・ミロ・ギャラリー(ロンドン)や303ギャラリー(ニューヨーク)などで多数開催。主なグループ展に"Comic Abstraction" (ニューヨーク近代美術館、2007)、"USA Today" (ロイヤル・アカデミー・オブ・アーツ、ロンドン、2006)、サンパウロ・ビエンナーレ(2004)、"Hybrids" (テート・ギャラリー、リバプール、2001)、ベルリン・ビエンナーレ(2001)、"Greater New York: New Art in New York Now"(P.S. 1コンテンポラリー・アート・センター、ニューヨーク、2000)などがあります。作品はホイットニー美術館(ニューヨーク)やテート・ギャラリー(ロンドン)など、多数のパブリックコレクションに収蔵されています。今回が国内初の個展となります。
〒600-8325 京都府京都市下京区西側町483番地(西洞院通六条下ル)
TEL:075-353-9992