» 作品紹介
ジェレミー・ディッキンソンは、子供の頃から蒐集してきたミニカーを主なモチーフとして描きます。モデルカー、トラック、路線バスからスクールバス、ダブルデッカーなどの色々なバス、クレーン車、そして電車など、たくさんのミニカーは色や種類によってグループ分けされ、整然と作家のアトリエに保管されています。そして積み上げられ、並べられ、また一点で、様々なコンポジションをとりながらペインティングに描かれます。細部まで克明に描写されるそれらのミニカーは、ディッキンソンの緻密な筆によっていきいきとし、そして時にユーモラスに、画面の上で新たな生を与えられているように思えます。
ディッキンソンはこのような自身の制作について、ドキュメンテーション(記録)という言葉を使っています。ひとつひとつのミニカーの錆びや傷、へこみ。またあるものは長い間や庭に置かれたままだったのか、日にさらされて色褪せています。ミニカーのボディに刻まれたこれらの全ての細部は、過去に誰かが遊んだことの証拠であり、記憶の痕跡なのです。それを丁寧にぺインティングに描くことで、ディッキンソンはひとつひとつのミニカーに物語と歴史があることを示します。それには彼の自伝的なものもあり、またミニカーの以前の持ち主である見知らぬ誰かのものもあります。またディッキンソンは以前のシリーズで、地域、時代特有のバスの車体デザインを、写真をもとにペインティングを制作しました。その「記録」もコミュニティの記憶を語り、乗り物、公共交通機関という機能的なものが、豊かな歴史をもっていることを伝えています。彼のペインティングの抽象化された無地の背景は、鑑賞者を子供の頃のような想像へと誘います。
» 展覧会について
本展では主に2つのシリーズの新作ペインティングを展示します。1つ目は色とりどりのブロックとミニカーで形作られた交通地図のシリーズ。ブロックの間にはめ込まれた「スーパーボール」は、マンハッタンのクロスタウンバスなど、路線を示しています。2つ目は上述の、ミニカーのコレクションを描いたシリーズ。積み上げられた車がタワークレーンやビルボードが支えているものもあります。彼のコレクションは子供の頃のものだけではなく、大人になってからもフリーマーケットや交換会などで増えていきますが、集めることと描くことは循環のようになっていると作家が話すように、新しいコレクションは常に新たなインスピレーションを与えます。加えて、新幹線や19世紀のアメリカの蒸気機関車などを描いたシリーズ「Rail Yard」から数点、そしてコンテナなど鉄道模型を使った壁掛けの彫刻作品を展示いたします。
» 作家プロフィール
ジェレミー・ディッキンソンは、1963年イギリスのハリファックス生まれ。ヨーク・カレッジ・オブ・アートを1983年に卒業後、1986年、ロンドンのゴールドスミス・カレッジを卒業。現在もロンドンを拠点に制作活動を行っています。
Fondazione di Ca La Ghironda(ボローニャ、イタリア、1998年)、Horsens Kunstmuseum(オランダ、2004年)の他、パリとアテネにギャラリーを構えるGalerie Xippasなど、ヨーロッパ、アメリカ各地で個展を開催。
小山登美夫ギャラリーでは、2000年、2002年、2008年に続き、4年ぶり、4度目の個展です。
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