「過去の作品を現在の時空に引き寄せる新鮮な試み」「作品のタイムレスな魅力を実感」などと好評を得ている「佐賀町 COLLECTION plus」シリーズ。日本初のオルタナティブ・スペースであった佐賀町エキジビット・スペース(1983─2000)の活動とコレクションを点検しつつ、新しい要素を加えて、日本の美術の現代史を綴っています。その第三弾に野又穫さんを迎えます。
「建築を絵画の中で完成させたい」との思いで、生まれ育った町の煙突や給水塔、工場などの記憶を発想の源として、どこにもない「もうひとつの世界」を創造してきた野又さん。1986年、佐賀町エキジビット・スペースで行われた初個展「STILL−静かな庭園」では、描きためた 42点のカンヴァスを宙吊りに展示。絵画の枠を超えて、過去や現在という時間のない、どこか懐かしい気配を空間全体に漂わせました。近年では、人工湖や発光するタワーなどをモチーフに、文明の行く末への期待と危機感の入り混じる、壮大なランドスケープへと向かっていました。
さらに昨年からは人間の欲望そのものをかたちとして取り入れた建造物を描こうと模索していたところ、2011年3月11日の震災が起きました。自らのアトリエに被害はなかったものの、しばらく何も手に付かない中、再び筆をとったときには、もう一度柱など建物を構成する部分の形から描き始め、それらをつなぐように筆を進めるしかなかったと言います。
展覧会名を「blue construction」と名付け、そのような憂いに浸りつつ、再起して生まれた新作絵画15点やスケッチなどを、佐賀町エキジビット・スペースで展示した当時の絵画作品1点とともに展示します。変わってしまった世界を自らのやりかたで確かめながら、再び希望を見出していこうとする足取りが感じられることでしょう。会期中には3月11日を迎えます。
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