深海武範は1975年に生まれ、東京芸術大学デザイン科で学び同大学大学院で修士課程を修了致しました。イラスト的な具象絵画の流行で、深海武範の作品もそのかわいらしいイメージゆえに注目を集めました。しかし、彼の作品はそのいかにも軽やかでかわいらしいイメージとは裏腹にその画面からは、狂気と正気、光と闇でかすかに均衡を保つ危ういバランスの上に成り立っています。一見イラストのようにすっきりと描かれたイメージは実際には荒いタッチで表現され、そのおとなしいイメージとは似つかない力のこめられた筆致に驚かされます。
深海の作品は母の少女時代、愛する家族などをモチーフとし心穏やかな状況を表すと同時に、わずかなきっかけから、好転も暗転もする人生のその一瞬をとらえた、まさに絵画でしか表現でき得ない表現といえます。
今展ではわずかなろうそくの光や、ステージの光、これから更にかがやくのか、消えてしまうのか、まさにアーティストとして生きる深海の人生そのもののように、又「終わらない日常」が遠い過去となった現代の日本人にとっても共感出来る新作と過去の代表作併せて約20点の展示となります。
卒業制作で制作した富士山、ジェットコースター、シャワーカーテンをモチーフとした三部作、またステージの女学生、光の中の少女が地下の画廊空間に一同に展示され、今までの理解を超えた深海の集大成としてご覧いただけます。何も約束されていない結末のわからない不安と自由が混在した人生そのものを一点一点の作品にこめた深海武範「待合室」にどうぞご期待下さい。
『この部屋は多分待合室です。地下にあると思います。
今は真っ暗ですが そのうち灯りがついて少し時間がたてばいろいろわかってくるでしょう。
私はあなたを待っています。 でないと何も始まらないから。
今はただじっと私はきっと私達だとおもっているものを見ています。目はみんなあいているはずだから
私達みんなじっとあなたを待っています。 だから私はあなたを待っています 。』
(2011年11月 深海武範)
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