日本の美術史はそれ以前からの工芸史、あるいは明治維新以降人工的に形成された美術史、また強引に導入された現代美術の系譜といった、複数の 歴史の平行によって、お互いに引き裂かれているという奇形化された状態にある。
殊に現代美術はアジア経済圏の急激な成長をバックボーンに、その価値が深く浸透する以前に投機と消費の対象となってしまいがちで、本来あるべ き誇りと気高さを確立しきれていない状態にある。更に昨今はチャイナマネーの保守化によって日本美術が低迷する傾向がみられ、その経済的価値 すらも国際的に危ういものとなっている。
こうした閉塞感、危機感への率直な返信として「巧術」は企画された。
これまで日本人ならではの物理的な細やかさや器用さは「工芸的」といわれ、西欧的な美術観に於いてはむしろ軽んじられる傾向にあった。
そうした観点、即ちは外国人からの視点による異国趣味、即ちはエキゾティシズム、ジャポニズムに基づかない、より日本の美術ならではの在り方 を模索する上でキーワードになったのは、その「工芸的」なるものを支える「技巧」である。
「巧術」はこの「技巧」を新たな武器とし、その鍛錬、修練による、自らをより高みへ運ぼうとする作家達のプレゼンテーションによって、
これまでの美術と一線を画した新しい価値観の創造を目指す。日本が古来からもつ力をもってして、日本美術の未来、その独自性、その可能性を具 体的に示唆しようと目論まれる展覧会なのである。
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