新田友美は京都大学法学部を卒業後、間もなくして画家の道を志し、米国のコーコラン・スクール・オブ・アートなどの美術大学で油彩技術の習得をした後、多摩美術大学に編入学しました。2010年の卒業直後にYUKA TSURUNOで開催した初個展「Infinite Set 1」では、アノニマスな女性像を水晶粉を練り混ぜた油絵の具によってキャンバスに描き、その技術力と卓越した表現力で鑑賞者を魅了しました。
展覧会名にもなっている「Infinite Set」とは新田が今もって描き続けているシリーズです。このシリーズでは膨大な数の細胞の絶え間ない生と死の繰り返しによって維持される生命活動と、そこに立ち昇る物質的営みをはるかに越えた無限に広がる豊かな感情や想像の世界、そしてそこに存在するかどうかも曖昧な認識の世界が、虚無のスペースに浮かぶ女性の身体を通して表現されています。
本展は同シリーズの新作10数点で構成されます。新田が「無限集合としての不安定なひと纏まり/若しくは纏まりとしての境界を逸脱していくような私たちの存在、同時に私たちの認識や記憶のあり方と同じようにどこかに存在しているようで存在しない存在を表したい」と言うように、繊細に塗り重ねられた独特の筆致で表現された、風に吹かれたような姿の儚い人間像は、私たちに存在や認識、記憶について深く問いかけます。
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