作家紹介
高田安規子・政子は、一卵性双生児で、立体、平面 、映像など媒体を問わず、共同制作を行っています。日用品や日常風景に大きさの異なる対象物を用いて手を加えたり、また尺度に関係する地図を素材として用い実物のサイズと比較して見せることで、作品に独特なスケール感を生み出しています。 この点について作家は次のように考えています。「そのスケール感への違和感は、既存の尺度に依存する人間中心的な知覚によって引き起こされるため、尺度という規定から解放された時、見慣れた事物を相対的な視点で捉えなおすといった知覚の可能性を示唆することを意図して制作しています」。
「Magic Carpet 魔法の絨毯」について
今回の展示では、トランプを素材として制作した新作を展開しています。トランプの裏面 には、手品やゲームでの不正行為防止のためにしばしば幾何学模様が描かれています。作家は、すべて異なる裏模様のトランプ54種類を探し集め、その模様のバリエーションを活かして小さな絨毯になるよう刺繍を施しました。そうして出来上がった作品が「Trump Card / 切り札」です。トランプは本来英語で「切り札」を意味しており、また「切り札」は最も有力な人・物・手段も示すことから、切り札のように効力のある作品になるようタイトルは名付けられました。また、絨毯には通 常の長方形のもの以外に丸や正方形など形のバリエーションがあり、トランプにも規定のサイズと異なった形や大きさのものを発見した作家は、形状の共通 点に興味を持ち、「Trump Card / 切り札」のシリーズとして「Suit ・ A~K」も作品化しました。
絨毯の柄のデザインは一般的に、花や木、太陽や星といった自然物が取り込まれており、それは森羅万象を象徴的に表しています。また歴史的には宇宙観を表した曼陀 羅の影響も深く受けています。そうした模様に込められた自然物と、ひいては宇宙をも表現する小さな絨毯を見下ろしていると、さながら小宇宙を俯瞰しているかの如くです。このように広大な宇宙を想いそして俯瞰する不思議な体験を、小さな絨毯の魔力が引き起こすという意図から、この展示は「Magic Carpet 魔法の絨毯」と題されました。
作家プロフィール
高田安規子・政子は1978年東京生まれ。多摩美術大学(安規子)、東京造形大学(政子)卒業後、渡英。2005年ロンドン大学スレード校大学院彫刻科修士課程卒業。現在国内外で広く活動している。 主な個展に、2008年 「The Little Land」Metis_NL、2009年「世田谷芸術アワード受賞記念展 高田安規子・政子」世田谷美術館等。レントゲンでのグループ展多数参加の他、2010年「Bigminis」ボルドー現代美術館、現在開催中の展示「かかわりの色いろ」水戸芸術館、などがある。 「かかわりの色いろ」 水戸芸術館 2011年7月30日(土)- 10月16日(日)
〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17
TEL: 03-3662-2666