土屋信子は昨年まで約10年にわたって、ロンドンに在住、制作を行ってきました。初めての本格的な展覧会出品が2003年の第50回ベネチアビエンナーレ。以降、注目の作家としてインターナショナルに活動を行っており、土屋の作り出す、身近なものや廃材を自在に組み合わせて作られる不可解で繊細な立体作品は、謎に満ちた作品タイトルによって独特の物語性を感じさせ、鑑賞者たちを魅了しています。
本展覧会名にもなっている「宇宙11次元計画」という作品は、 "11次元の空間に行くための装置"として制作されています。日用品のような素材や、金属やガラス、シリコン等の材料から作られた装置(=作品)は、どの部分がどのように作動するのかあえて明示されず、鑑賞者たちの自由な解釈にゆだねられます。
不可解なタイトルは、自分たちは皆タイムマシーンの中で生きているようなものである、という土屋信子の考えがベースになっています。現在という時空にのみ生きていると思っている私たちも、過去の記憶や経験と共に存在し、また未来について考え意識することも同時に行っています。実は私たちは常にタイムマシーンのような複雑な行き来を自在に行っているということを、土屋は強く意識し、この作品にもそれが反映されているのです。11次元空間に行く、というおとぎ話のような体裁をとりながら、私たちの存在する場所や時間について深く考えさせられるインスタレーション作品となっています。
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