一度見たら忘れる事の出来ないキャラクター像を描く金子國義は、デビューから常に時代を超越し、ファッション・イラスト・芸術のボーダーを突き抜けたポジションで活動し続けてきました。キャラクターを絵画のフォーマットへ落とし込み作品化するこのスタイルは、後の日本を代表する国際的なアーティストへ多大な影響を与えて、また一つのアートの形式となりました。今展「聖なるもの」では、芸術家金子國義が自己の内にある城の最も暗く神聖なる場所へ光を当て、より神秘的な領域を表現しています。
金子國義は1964年に自宅の部屋を装飾するために油絵を描きはじめました。澁澤龍彦による推薦で実現した「花咲く乙女たち」を皮切りに各地で個展が開催され、未成熟でありながら意志的な表情の女性像や、精悍な青年のイメージはファッション界を中心とし、瞬く間に浸透しました。
三島由紀夫、四谷シモン、勅使河原宏といった表現者との交流を通し、比類のない世界観を築くと同時に、その表現はイラストやプロダクトといった媒体を通し、ポップカルチャーのアイコンともなりました。幼児性、装飾性、透徹とした美意識に彩られる金子の作品と、美を至高とする非現実的な生き方そのものが、ゴシックロリーターやビジュアル系といったサブカルチャーへも影響を与えました。
今展は金子の50年に渡る作家活動の集大成としてとして、150号の大作を中心にその先駆性と独自性を『聖なるもの』として再び振り返ります。
『私が興味をいだくのは、おのれの城に閉じこもり、小さな壁の孔から、自分だけの光り輝く現実を眺めている、徹底的に反時代的な画家だけである。』(澁澤龍彦 青木画廊「金子國義個展 - 花咲く乙女たち」案内状より抜粋)
時の流れに左右される事なく、ひたすら自分の求める世界を見つめ描き続けた金子國義の作品は多様な表現が氾濫する現代アートシーンにおいて、ひと際異質な迫力を備えています。金子國義『聖なるもの』にどうぞご期待下さい。
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