アートは発信や表現の方法を様々に変化しながら発展させてきました。大きな眼でそ れらの表現を注視してみると、それらは「 人間とは何か」という一つの重大な質問を問いかけているように思えます。さらにその根本的な疑問の向こう側に「人間の夢」 つまり 「ユートピア」(理想郷)が多くの作家によって表現されてきたとも思えます。欲求や恐怖、強さや弱さ、衝突や和睦などの強い想いをもとに、「ユートピア」は時代によって変化し続けてきたのです。 ミシェル・フーコーの「ヘテロトピア」(混在郷)つまり「世界に実在するユートピア」、と いうテーマを据えて作品を発展させてきた私に とって、ユートピアとは何かと新たに定義し直す必要がありました。
自分の理想郷を構築すればそこから自然と混在郷そのものが産まれるのではないかと考えました。今回ご覧いただく作品は世界7つの海に散らば った「無人島」を衛星写真や地図を分析し「かたち」を収集した僕の想像するユートピアです。Temporary Autonomous Zone (Hakim Bey)の中で紹介される実在しただろうファントムアイランド、ムー大陸やスイフトのガリバー旅行記など人々が歴史を通して描いてきた理想郷を背景に置き、有機的な血管や心臓、骨によって繋がって生きた野獣のように私のなかで変化を繰り返し続けるユートピアの断片化した世界に皆様をお招きしたいと思います。
アーティスト 南條俊輔フランソワ
東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル
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