国内では4年ぶりとなる今回の個展では、新作十数点を展示します。
現代ほど美術が人々の生活のすみずみにまで浸透している時代はありません。
美術は時代を映す鏡です。
現代美術のアーティストの主題は、同時代の出来事や過去の情報の引用など、多岐にわたっています。そして、私たちの日常生活をあらゆる角度でとらえ、それのディテイールを含めたすべてを取り込もうとしていることが特徴として挙げられます。日常とは、私たちの生活を構成する家族であったり、職場であったり、国家などさらに大きなコミュニティーであったりします。
西澤の作品も、まさに日本人の平均的な日常生活を主題としてきました。
これまでの西澤の作品には、おじさんやおばさんが独特の空間の中で本人たちがそれと気づかぬうちに不可解な行動をとる状況を俯瞰したものが数多くあります。そうすることで日常の中に潜む普段は気づかない非日常の「影」を描いてきました。
そんな西澤が今回のテーマとして選んだのは「家族」です。
古代社会では、自分たちの外敵がはっきりしている場合、容易にファミリーの結束を強めることができました。しかし、産業革命から始まりアメリカ的な消費生活スタイルに象徴される今日のグローバルスタンダード社会に至る流れの中で、こうしたローカルな社会形態が衰退していきました。このような社会では、家族の関係は機能的になる一方で直接的な心と心の結びつきは希薄になっていってしまったように見えます。それは、国家間の戦争における均衝関係に繋がるものなのかもしれません。
メディアなどを通してこのような社会からの影響を受けた中で形づくられた家族だんらんの風景の中に、瞬間うすら寒いものを感じる―― 西澤の作品はこうした現実を私たちに突きつけているのかもしれません。
同時に、西澤は自身の家族を通してより生な人と人とのつながりを感じるようになってきたことから、この社会を変えていく希望の芽のようなものも家族の中に見出したい、という彼の願いが込められているかもしれません。
近年は中国、韓国、ドイツ、香港、台湾、イタリアでの展覧会と、海外での活躍が続く西澤千晴の最新作を、この機会にぜひご高覧ください。
皆様のご来廊心よりお待ちしております。
[略歴]
1970年長野生まれ。
東京造形大学造形学部美術学科絵画専攻を卒業後、版画を媒体とした制作活動を続けていたが、「思ったことをより早く形にしたい」と絵画へ移行。 2003年のオペラシティギャラリーでの個展、2004年のVOCA展入賞後、社会に対する不安感を感じさせつつもユーモラスな表現が高く評価され、2005年には東京画廊で個展、2006年には香港、ソウルで相次いで個展が開催されるなど世界的
にも注目されるアーティスト。平坦で現実味のないフラットな背景をバックに、スーツや割烹着を身にまとった群衆をミニチュア模型のように細かく描くことで知られる。近年はスタインウェイ・ジャパンとのコラボレーション、横浜、東京、北京、ドイツ、ヴェネチアでの展覧会など更なる飛躍が期待される。
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