1983年埼玉県生まれの指田菜穂子は、2006年に早稲田大学政治経済学部政治学科を卒業後、2009年に東京大学大学院総合文化研究科を卒業しました。
2006年にGEISAI #10スカウト審査員賞 (六本木ヒルズアートアンドデザインストア賞) を受賞。
西村画廊では、2008年の "September Show'08" 以来、グループ展やアートフェアで定期的に作品を発表しています。
指田菜穂子の作品の大きな特徴は、ポップでユーモラスな筆致によって画面を埋め尽くすように描かれた様々なイメージの集合です。上図の「ほろよい 」(2011) を例にとると、そこにはタイトルが示唆する通り、キリンビールのポスターや新宿歌舞伎町の入口、ミラーボール、ヘミングウェイの肖像画、サントリーのアンクルトリス、あるいはマネの『フォリー・べルジュールの酒場』や小津安二郎の『秋刀魚の味』、ビリー・ワイルダーの『お熱いのがお好き』、祝樽......などといった、「酒」という言葉から連想される多種多様なイメージの数々が画面中に活き活きとひしめています。
そして、たとえば「酒」という言葉一つをとってみても、「ミラーボール」と「酒」が連鎖的にイメージで結びつく人とそうでない人がいるように、ある知覚をきっかけに各々の心の内で生起するイメージは様々であるため、「酒」にまつわるイメージにあふれたこの作品を前にすると、「酒」という概念を自ずと多角的な視点から捉え直すことになるでしょう。
今回の展覧会では、上記の「ほろよい」(2011) をはじめ、旅をテーマにした「くさまくら」(2010) や夢をテーマにした「こんな夢を見た」(2010) 、釈迦の四門出遊と子どもをテーマにした「迦毘羅衛の憂鬱」(2010) など、新作絵画8点を展示致します。
どの作品にしても、画面に描かれているすべてのイメージにはそれぞれ共通した意味――たとえば「くさまくら」なら『旅』――が背景にあるので、そうしたイメージの一つひとつを検証するようにして丹念に見ていくのも、彼女の作品の楽しみ方の一つといえます。
歴史や心理、または映画や文学といった水脈から堀り起こされたイメージから構成される指田菜穂子の細密画には、既存の絵画にはない優れた洞察が秘められているといえるでしょう。
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