本展覧会は、現代の新しい美術表現を紹介するシリーズの第2回となります。
山本基は、床に塩で迷路状の模様を描くことで知られているインスタレーション作家です。実妹が24歳の時に脳腫瘍で他界したことが"塩"を用いた制作の原点でした。
妹の死後、その現実を受け入れるために行ったことは、社会の中で死がどのように扱われているかを作品を通して体感することでした。そして"塩"という素材に行き着きます。
発病から入院、告知、在宅介護、そして死を経た驚きと悲しみ、再び会いたくても決して叶わない現実から生じた葛藤を形にしていきます。「多くの大切な記憶は、時とともに変化し、薄れてゆく。しかし、写真や文章では残すことのできない記憶の核心に、私はもう一度触れてみたい」と作家は語っています。
2008年に「桜」、2010年には「たゆたう庭」を制作。これまでに、アメリカやヨーロッパをはじめ10数ヶ国で発表してきました。
本展では、故人の記憶を超えて、現代の死生観の状況や自然と人間の関係をテーマにしました。箱根の地から得た印象をもとに、長い歴史の中で繰り広げられてきた生命活動の連なりを、約7トンの塩を用いて表現します。2週間の制作期間を公開し、作品が完成するまでの過程をご覧いただけます。
山本基の作品を通じて、人間の存在をさまざまな視点から見つめ、自然と芸術の力を感じ取る機会とします。
現世の杜
展示プランのドローイング
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