ローレル・ロス(LaurelRoth)は2004年に制作活動を本格的にスタートさせました。ものづくりへのこだわりと、人間の創造的な行為がもたらしたひずみを同一の作品に見せるロスの作品は、アメリカ国内に留まらずインドやヨーロッパでも注目を集めています。
『私は工芸的、職人的な技術で人工の素材を変化させ、人間が自分自身や環境へ介入せずにはいられない本能と、それによって引き起こされた現象を表現しています。』
「Man's Best Friend」というシリーズでロスは、産業用のアクリルを使い小型犬の頭蓋骨を彫り、磨き上げ、天然の鉱石のように滑らかで無機質なオブジェを作り上げます。人間の良き友達であるように改良を重ねられ、野生での生活から乖離させられた種族は現代社会の所産であり、ロスはその概念に新しい工芸品としての形を与えました。
自然を模倣することで創造性を追求してきた人類は、いつしか自然を支配する事へ情熱を傾けるようになりました。その欲望が歴史を大きく突き動かし文明を作り上げ、そして現在その崩壊を目の当たりにしている現実の中で、ロスの作品は「Supernatural(超自然)」の美しさと悲哀をユーモラスかつ的確に映し出します。そしてそこからは、古来から変わる事なく歴史の舞台裏を支え続けてきた、ものづくりへの本能的な衝動を感じ取る事が出来ます。
今展では「Man's Best Friend」に加えて、猟銃の製造技法を活かして家畜の骨を再現した木彫作品、生理用品を支持体に生態、繁殖、女性の役割を反映する虚飾のないメッセージが刺繍されたフォークアートのような作品など、ロスの代表的な作品が揃います。圧巻はアンディー・ディアス・ホープ(Andy Diaz Hope)と現代の「進化論」をテーマに共同制作されたタペストリーの大作です。日本で初めてとなるローレル・ロスの個展をどうぞご期待下さい。
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