三宅一樹は1973年東京生まれ、多摩美術大学大学院にて博士号を取得し(論文『木彫刻の心技体 - ものつくりのアニミズム』)、国内外の美術館やギャラリーおよびアートフェアで作品を発表している彫刻家です。
木という素材を最大限に活かし、人の身体とそれに内在する厳かな精神を表現する三宅の作品は、これまで二つのテーマによって支えられてきました。それは、作品に最適な素材を選んで制作される「素脚詞」と、大地との繋がりを重視するヨガのポーズに着想を得て木と人間の精神を結びつけて制作される「YOGA」。
今回、三宅は「神像」という新テーマに挑戦しています。単なるマテリアルとしてではなく、それ自体が圧倒的な存在感を放ち、通常では手にする事のできない神木との出逢いから、その木に宿る神性を彫り出しています。
「神像」とは、大自然に対する畏怖の念が形となったものです。最古にして代表的な神像としては、京都の松尾大社《男神・女神坐像》、和歌山の熊野速玉大社《熊野速玉大神坐像・熊野夫須美大神坐像》などが挙げられます。これらは山や滝などの自然に宿るとされる神々が神聖な樹木を依代に形象化されたものであり、日本古来のアニミズム的な思想を伺い知る事ができます。
近年、この神像というものに着眼し制作する美術家はほぼ存在しない中、これまで木と真摯に向き合ってきた三宅は、現代において忘れられがちな自然に対する祈りの精神を、刻を越えて表現しようとしています。本展のメインとなる作品《磐座女神》(いわくらにょしん)は、三宅が入手してから10年もの間、触れる事ができなかった樹齢200年以上の榧の巨樹に宿る神秘を形象化したもの。
木はそれ自体が唯一無二の存在。その中でも未知の力を秘めた木から生まれてきた神像は、混沌としたこの時代に生きる我々の心に重要なメッセージを伝えてくれるはずです。
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