1975 年生まれの飯沼英樹は、愛知県立芸術大学大学院卒業後、ナント国立美術大学(フランス)に入学。
同学のヨーロッパ高等教育交流プログラム(ERASMUS)によりコペンハーゲン(デンマーク)、ミ
ラノ(イタリア)、カールスルーエ(ドイツ)に留学し、ヨーロッパ各地にて個展やグループ展に出品、長らくヨーロッパで活躍していた木彫作家です。
今年2 月に3331 Arts Chiyoda にて開催されたアートフェア「TOKYO FRONTLINE」では、蛍光ピンクの壁を背景にブースをファッションショーのランウェイに見立てて展示するという、強烈な世界観で日本での鮮烈なデビューを飾り大きな話題をよびました。
飯沼英樹の作品にみられる共通した特徴として、粗く彫られた木肌の質感が挙げられます。
スケッチや下絵におこすことなく頭の中で形態のイメージを反芻し制作された作品は、繊細に彫られた箇所と、ささくれや節が生々しいざっくりした彫り跡の両面が混在し、鑑賞者の想像力をかき立てる絶妙なバランスを保っています。
ファッション雑誌に掲載される女性や、東京の街を歩く一般女性のスナップショットをモチーフに制作された作品は、いずれもファッションに意欲的な今を生きる女性達であり、現代の社会とのつながりを強く感じさせます。
また飯沼は自身で作品を撮影する際、ホワイトキューブではなく街中や自然を背景に選びます。本人には写真作品という意識はなく、木彫のイメージをよりわかりやすく伝えるために選択した手段ですが、「今」を捕えた飯沼の作品はどれも驚くほど現代社会の風景に溶け込み、新鮮な相乗効果を生み出しています。
このたびの日本での初個展では、飯沼は原点に立ち返り、作品に宿るべき「美」をひたすらに追求しています。
飯沼を制作へと突き動かす情熱は、飯沼の考える「美」を形に表現するというシンプルな欲求
です。
それは人間の理想像を追い求めるピュグマリオン的価値観からくるものではなく、価値観が多様
化する現代の「社会」に生きる作家が自ら考える「美」のあり方を、作品という形で提示するものです。
長らく海外を中心に活動を続けてきた飯沼英樹の、満を持しての国内初個展となる「美女」に、どうぞご期待ください。
東京都世田谷区弦巻2-30-20 1F
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