私の作品は、木漏れ日の影をトレースするという「移ろいゆくもの」を表現することが出発点でした。
光と影が織りなす絵画の奥行きの中に、隠し絵的な技法と影絵的な描き方でモチーフを浮かび上がらせるといった作風で、人やものの存在を問い、見つめています。
記憶の中の確かにある、うつつな存在。もの。人間とは何か?ということを自分自身の正直な世界観を解放して描いています。
最近は自然が作り出すものの中に兼ねてからのテーマを合体させようと試み、爆発という自然現象に着目し、新たなシリーズとして展開しています。
時間的にさかのぼって考えれば、この宇宙は何百億年という昔、ビッグバンという大爆発によって生じたといわれています。爆発し宇宙が拡散していく過程で、冷えて物質が生じ、太陽も地球もでき、ついには人間のような生命をも生み出したといわれています。大地も噴火という爆発によって、地形が生まれ、森や生命が育まれました。そんな私が育った、山、川、海の大自然から、さまざまな恩恵を受けて来た日本。大自然は時に牙を剥き暴れ、今、日本は未曽有の大震災を経験し、自然の脅威に直面しています。破壊と創造が繰り返されて地球や人類の歴史がある。そのような、「時の移ろいの中で新たに生まれ出るもの」を主題に、日本人である自分を見つめ、芸術で表現したいです。
芸術が人の心の支えになり、活力の源になることを信じています。
塚本智也