清楚な官能性―久米亮子の近作 馬場駿吉
人は2点を結ぶ最短距離としての直線的な理知を求める一方で、つねに生命の器(うつわ)としての原型、つまり膨らみや凹みのある曲線的なかたちへの審美の眼差を捨てることはない。
しかし、生命は容赦なく流れ去る時間の中にある。画家久米亮子はその一瞬のきらめきを色彩化し、有機的なフォルムの器に掬い取ってキャンヴァスに引きとどめる。
そんな作品を個展の度に見つづけて10年余。
その出会いの当初から感じとれたのは、植物がもつ清楚な官能性とでも言える香気の漂いだった。
近年、それが一層密度を高めているように思う。
私たちの身体が持ち合わせるフォルムや色彩に重なり合うところがどこかにあるからなのだろうか―新作に接して確かめてみたい。
(美術評論家・名古屋ボストン美術館館長)
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