写真っていうのは、まあ写真つーか人生は、ノスタルジーだと確信をもったわけだよ。こういう光景に出会って。今のデジタルの時代にだよ、都会の真ん中でこういう棒だよ、棒をもってザリガニだか鯉を追ってるんだよ。少年時代の思い出とかさ、人生ではそういうノスタルジーが一番大切だと確信をもった。老人は(笑)。
2011年3月 荒木 経惟
前立腺癌を乗り越え、自身の死との葛藤を作品「遺作空2」にまとめたのちの2010年3月2日、荒木は妻陽子亡きあと長年連れ添った愛猫チロの死に直面しました。幸福な時間が荒木を残して過去へと過ぎ去る中、都内の公園で出会った子供が無邪気に池で遊ぶ光景は、荒木に幸福だった時間を思う気持ち(ノスタルジー)こそが人生だと確信させます。
妻陽子と食事をし、愛猫チロが走り回った自宅のバルコニーを写した作品「楽園だった」を始め、昨年3月2日以降にあくまでフィルムにこだわり撮影した展示作品の総数約330点は、「生きることは撮ること」と語る荒木の生欲(性欲/エロス)が微塵も衰えていないことを意味します。
90歳の生涯において3万点を超える作品を残した葛飾北斎に挑み、「写狂老人A」を名乗る荒木の、フィルムによる表現の限界を探る作品群を是非この機会にご高覧ください。
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